Θ special lunch Θ





水窪君とお弁当交換をするようになってから、 たまに私たちは二人きりで食べることがあった。 今日もいつものように屋上へ上がって、お弁当を交換する。 水窪君のお弁当はいつも美味しくて、この時間がすごく楽しみだった。




「わー…、今日も美味しそう」

とても男の子が作ったなんて思えないような綺麗なお弁当。 卵焼きだって焦げてないし、彩りも文句ない。 対する私のものはちょっと彩が悪い気がする。

「守永さんのも美味しそうだね」

そう言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり私の腕はまだまだで、 次こそは美味しいのを作ってあげたいなぁと思いながら箸をすすめた。


「守永さん」
「ん?」

もぐもぐとご飯を口に運んでいると、横から水窪君が笑いながら声をかけてきた。

「ご飯粒……、ついてるよ」
「へ?」

慌ててお弁当箱を置いて口周りを手で触るのだが、肝心のご飯粒が見当たらない。

「そこじゃないよ。ああもう……、なんでそんなところにつくかな」

そう言って、水窪君の手が伸びる。
そういえば、ルーエンにも「何でそんなところにつくんだ」と笑われてしまったことを思い出した。 そんなにがっついていたのだろうかと思ったら、なんだか無性に恥かしくなった。




「守永さん……」

水窪君の手が、そっと私の頬に添えられた。

「あれ? ご飯粒は……」

と思ったら今度は水窪君の顔がゆっくりと近づいてきて、ペロリと頬を舐められてしまった。

「み、みみ、水窪君っ!」

驚いた私の顔をマジマジと眺めながら彼は笑った。

「いや、俺が取った方が早いかなって」
「だ、だったら手で取ってくれたって……」
「最初はそのつもりだったんだけど……、君、さっきほかのこと考えてたでしょ?」

そう指摘されて、ルーエンにご飯粒をとってもらった記憶が再び脳内に再生された。

「君の反応から両親以外の男だと判断したから、だったら、もっと強烈なことしてやろうかなって」
「な、なんでそんなこと……」

他の男っていったって、相手はルーエンだし、悪魔だし。
水窪君が私の頬を舐める理由にはならないと思った。

「だって、そうしたら今度からご飯粒ついてるよって言われたら、君は俺を思い出してくれるでしょ?」



水窪君とのお昼は、楽しくて、美味しくて、でもちょっと心臓に悪い。




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鈴菜が転校後でも前でもいいかなと