Θ call, call, ca!! Θ
「亜貴ー」
「なんですか?」
「んー? 呼んでみただけ」
そう言って先生はニコニコと楽しそうに笑っている。
人の名前を呼ぶだけで、何がそんなに楽しいんだろう。
「亜貴ー」
「なんですか」
「亜貴ー」
「なんですか」
私が返事をしなければ、きっともう名前を呼ばないんだと思う。
そう分かっていて返事する私も、相当重症なのかもしれない。
「亜貴―」
先生と生徒だった頃よりちょっとだけ甘い響き。
「亜貴―」
子供の頃から何度も呼ばれてきた名前なのに、この人の声で聞くとすごく特別に思える。
「亜貴ー」
「なんですか、紺さん」
「あー……って、ちょっ……今、えっ……?!」
見る見るうちに顔を赤らめ手で口元を覆ってしまった姿に、思わずふふっと笑みがこぼれてしまった。
なるほど。これは確かに楽しいかもしれない。
他の人は絶対見られない、甘い二人だけの特権。
「紺さん」
「ど…どうした? 亜貴」
ジッと見つめて名前を呼べば、まだ少し緊張しながらも返事する紺さん。
そんな姿が可愛くて、愛しくて、
「大好きッ」
自然と漏れた愛の告白に先ほどとは比べ物にならないぐらい真っ赤な顔をした紺さんがいて、
私はますます笑みを強めるのだった。
» Back