戸高さんの誕生日が近いこともあって、今日はこっそりとプレゼントを用意した。 タイミングを見計らってプレゼントを渡そうと思っているのに、 なぜか戸高さんの機嫌は悪い。




「先週の日曜、なにしてた?」

ようやく口を開いてくれたと思ったら、何故かそんなことを問いかけられた。

「その日は買い物に行ってました」

戸高さんから久しぶりのデートに誘われたけど、 どうしてもプレゼントを買いに行く日がその日しかなくて、 私は誘いを断ったのだ。

「知ってる。オレが聞きたいのは誰と何をしてたのかってこと」
「あ」

戸高さんの口ぶりからすると、私が一人ではなかったことを知っているようだ。

「お互い、異性と出掛けるのは無しにしようって決めたよね」
「はい」

両想いになったあと、お互いがお互いに焼きもちを妬いていたことが発覚した。 それからは、いくら相手が友人でもお互い異性と二人きりで出かけるのはなしにしようということになったのだ。

「なのに、オレより年上のどこがいいわけ?」

やっぱり、戸高さんは私を見かけたのだ。

「そりゃ、オレと付き合ってるくらいだし、麻衣は年上好きかも知れないけど、あんなさえないオッサンに浮気されるなんて思わなかった」
「ちょ、ちょっと待ってください」

戸高さんの言葉に、私は慌てて口を挟んだ。

「なに?」
「私、浮気してませんよ?」

その言葉に、戸高さんは「ハァ」とため息をっくと、

「だったら、あの相手は誰?」

ピシャリと言い放った。 だから私も、真っ直ぐ戸高さんを見つめて答える。

「父です」
「は?」

ポカンと、そんな音が聞こえそうなぐらい、戸高さんは間の抜けた顔を私に見せた。

「だから、私のお父さんです」

もう一度ハッキリと答えると、

「え?」

ようやく言葉を理解した戸高さんが驚いた顔を見せた。

「さえないおっさんは、私のお父さんです」

戸高さんの反応が可愛くて、わざとそう口にすると、

「あっ、いや。えっと……その、素敵なオジサマだよね」

と彼は笑った。 それから顔の前でバチンと両手を合わせると、

「ごめん」

と戸高さんは素直に謝った。

「オレとのデートほっぽって随分楽しそうだったから……、本気で妬きました」

大きな体をしゅんとさせて告げた言葉に、

「戸高さんのことを考えてたから楽しそうに見えたんですよ」

私はにっこりと笑って、タイミングをうかがっていたプレゼントを差し出した。



だってあの日私は戸高さんのプレゼントを選んでいたのだ。 彼が喜んでくれるだろうかとか、どんな反応をするのかなとか、そう思うだけで笑顔になったのだ。



私の想像通りに嬉しそうな笑顔を浮かべた戸高さんは、

「ありがとう、麻衣。チョー嬉しいっ」

想像にはなかった熱い抱擁とキスのオマケまでくれて、 想像以上に喜んでくれたことに私まで嬉しくなってしまうのだった。


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嫉妬EDも好きです^^