「……詐欺だ」
ポツリ漏らしたと私の言葉に、公瑾さんはにっこりといつもの笑みを浮かべた。
Θ
あたたかなひと Θ
あまりの暑さに朝からぐったりとしていた。
スカートをふためかせながら廊下を歩いていたら公瑾さんの後姿を見つけ、
私はそっと足音を忍ばせ彼に近づいた。
「公瑾さーん!」
そう言ってぎゅっと彼の手を握り締めた。
ひんやりと冷たい手を想像していた私は、温かいその手に思わず目の前の人物を確認してしまった。
もしかしたら公瑾さんのそっくりさんだったのかもしれない。
「なんですか?」
そこにいたのは間違いなく公瑾さんで、
「……詐欺だ」
ポツリ漏らしたと私の言葉に、公瑾さんはにっこりといつもの笑みを浮かべた。
「大方、私の心が冷たいから手も冷たいとでも思っていたのでしょう?」
心の中をズバリと読み当てられ私は一瞬言葉に詰まった。
けれど、
「ち、違いますよ。公瑾さん心が温かいから、手は冷たいのかなって」
慌てて口を開いた。
「私の国では手が冷たい人は心が温かいって言われてるんです」
我ながらナイスなフォローだと思いながら告げると、
彼は笑みを崩さないまま口を開いた。
「なら、手が温かい人は心が冷たい。とも言いますね」
「…………あ」
自分で墓穴を掘ったことに気付いて、恐る恐る公瑾さんを見上げる。
彼は相変わらずの笑顔を貼り付けたままで、怒っているのか本心はわからない。
「ごめんなさい」と謝ってさっさと手を離してこの場を退散しようとした私に、
「罰として。今日は一日こうしていなさい」
と公瑾さんに告げられ、私はポカンと間の抜けた顔をしてしまう。
「言葉が理解出来ないのですか? ですから、今日一日私の手を繋いでいなさいと言ったんです」
繋いだ手は相変わらず温かくて、冷やしてもらいたかった私の手はいっそう温められてしまっていた。
けれど、
「……はい」
その温度が今はとても心地よくて、一日といわず明日も明後日も繋いでいたいと思った。
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手を繋ぐのがすごく好きです^^