玄徳さんは子供に優しい。 そういうところも大好きなんだけれど、最近の私はそれが面白くない。





Θ 飴と飴 Θ





「どうした? 花。不機嫌そうな顔だな」
「誰のせいだと思っているんですか」

ぷくっと頬を膨らませると、玄徳さんは困ったように苦笑した。 こういう態度が恋人から程遠くさせていると分かっていても、 面白くないものは顔に出てしまうのだ。

「何か不満があるのか?」
「そうです」
「なら、言ってみろ」

そう言って玄徳さんは真っ直ぐに私を見つめる。 だから私も、今の正直な気持ちを真っ直ぐに伝える。

「恋人同士になってから、スキンシップが減ったと思います」
「そうか?」
「そうです。前は頭を撫でてくれたのに、最近全然です」

私の言葉に彼は「うーん」と考え込んでいた。

「近所の子供たちの頭はよく撫でてるじゃないですか」

私の頭は撫でてくれないのに、近所の子供の頭は撫でる。 それが最近、私は面白くないのだ。 「悪かった」と頭を撫でてもらえることを期待していたのに、

「まぁ、前は花のこと、年の離れた妹だと思っていたからなぁ」

なんてあっさりと言われてしまった。

( い、妹って!! )

子ども扱いされていたのかとショックを受ける私に、

「今は妹だなんて思ってないから撫でてないだろ」

玄徳さんは告げる。 それは確かにそうなんだけれど、撫でてもらえないのはやっぱり寂しい。 しゅんと落ち込んだのが表情に出たのか、

「それに、花を子ども扱いしているようで俺が嫌なんだ」

玄徳さんはそう言ってふわりと笑った。 つられるように笑顔になった私に、

「落ち込んだり、笑ったり。忙しいな、お前は」

そう口にしながら彼が一歩私に近づいた。 距離が縮まって自然と見上げる形になれば、そっと大きな手が私の頬を包み込んだ。

「恋人同士なら、こういうスキンシップもあるだろう」

そんな言葉と共におりてきた唇はいつも以上に温かで、 今までの不満なんて一気に吹き飛んでしまった。



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飴と鞭ならぬ飴と飴。ずっと甘やかしていればいい。