ポクポクと、原っぱで遊ぶ子供たちを眺める。 竹馬で競争するその姿に、ここへ来たばかりのことを思い出して思わず口元がほころんだ。





Θ Hello, little princess Θ





「どうしたんだ?」

そう言って私に声をかけてきたのは玄徳さんだ。

「子供たちを見ていたんです」
「あぁ、懐かしいな」

私の視線を辿って目を細めた玄徳さんは、きっと私と同じことを思い出しているのだろう。

「確か花が竹馬を壊して……」
「……あれは本当に恥ずかしかったです」

子供に借りていざ乗ろうと体重をかけたら、竹馬が壊れてしまったのだ。 あれは乗れないことよりも恥ずかしかった。 しかも子供たちには「お姉ちゃん重いんだよ」と散々言われてしまったのだ。 玄徳さんの目の前で口々にそんなことを言われ、消えてしまいたいほどだった。

「私はいたって標準なのに……」

思い出してまた恥ずかしさがこみ上げてきた私は、小さく呟いた。 すると、

「……へ? えぇっ!」

急に視線が高くなった。 何事かと思っているとすぐ目の前に玄徳さんの顔がある。 彼が私をお姫様抱っこしたのだ。

「なっ、なっ、なっ……」

真っ赤な顔で口をパクパクとさせる私の顔を見ながら、

「花は軽すぎるぐらいだと思うけどな」

なんて彼が口にするものだから、私はこのまま顔から火を吹いて焼死してしまうんじゃないかと思った。

「お、おおお、おろして下さい」
「ん?」
「ち、ちち、近いです。顔近いですからっ!」

両手両足をふって暴れると、

「初めてじゃないんだからいいだろう」

なんて彼は笑う。 こんな恥ずかしいことは一度だけで十分なのだ。 数をこなしたからと言って慣れるわけでもない。

「よ、良くないです。恥ずかしくて死んでしまいます」

告げると彼は少し考え込むような顔を見せ、

「なら、恥ずかしいと思わなければいいんだな」

と尋ねる。「え?」と思った時には彼の顔がゆっくりと近づいてきていて、 私は大慌てで目を閉じた。



「な、なにするんですか」

唇が離れると同時に抗議の声を上げれば、

「抱き上げるより恥ずかしかったか?」

なんて問いかけられて、急な口付けの意味を理解した。 私がお姫様抱っこが恥ずかしいと思わないぐらいに、彼はもっと恥ずかしいことをやってのけただけなのだ。

( まんまとやられた! )

あの本がなくなってからは私は本当に普通の女の子になってしまい、 玄徳さんに翻弄されてばかりなのだ。 だから私が唯一彼に勝てる方法言えば、

「し、知りません!」

と、子供じみた方法でプイと顔を背けることだけなのだけれど、 私には彼に策を与えられなくなってしまった今が、何よりも幸せなのだ。



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竹馬はホント爆笑でしたw