きゃっきゃと大小の楽しそうな声に混じって、花の声が聞こえたような気がした。
こんな朝から何を騒いでいるんだと部屋を出てみれば、そこには銀世界が広がっていた。
Θ
雪だるま Θ
「あ、仲謀。おはよー」
そう言ってブンブンと腕を振る花の横には、大きくて真っ白な物体があった。
「なんだそれ」
顎で指し示すと、
「雪だるま。知らない?」
と花は尋ねる。
雪だるまぐらい知っている。
俺が聞きたいのは、何故朝っぱらからこんなでっけぇ雪だるまがあるのかってことだ。
「あのね。花ちゃんすごいの」
「起きたら庭で花ちゃんが一人で雪をゴロゴロ転がしててね」
「ガッて乗っけたの」
「全部一人で作ったんだよ」
大小が身振り手振りで説明をしてくれる。
つまり、大小が起きるよりも前から、花が一人でこれを作ったということだ。
「バッカじゃねぇの」
「バカッてなによ」
「バカにバカって言って何が悪いんだ」
そう言ってつかつかと花に歩み寄ると、ガッと両手を掴んだ。
予想通りその手はキンキンに冷えていた。
「温かい……」
掴まれた手をそのまま自分の頬へと導いてそんなことを呟く花。
けれど、照れるより先に怒りがこみ上げてきた。
手だけじゃない。その頬も、冷たかったからだ。
「ただでさえてめぇは薄着なのに、朝っぱらから雪触ってたら冷えるに決まってんだろ!」
少しきつく言い過ぎたかもしれないけれど、
コイツにはこれぐらい言っとかないと何遍でも同じことをするだろう。
チラリと花に視線を向ければ、このバカはしまりの悪い顔をいっそう緩めていた。
「な、なんだよ」
「嬉しいから」
「俺は怒ってんだぞ」
「だって、私の心配してくれたんでしょ?」
そんなことを嬉しそうに言われてはそれ以上文句も言えないわけで、
「仲謀、照れてるでしょ」
「照れてねぇよ」
「嘘だ。だって手がさっきよりも温かいもん」
言葉のかわりにぎゅっと繋いだ手に力を込めるのだった。
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(私たちがいるって忘れてるのかな、仲謀)
(せっかくの雪だるまも溶けちゃうよね。あついあつい)