日曜日。休日ということもあり、いつもより早く目を覚ました。 どこかに出かけるとなると二人の予定を潰してしまうことになるから、 決まって私は部屋で過ごす。 けれど昼近くになると、ここ数日の日課のように私の足は台所へと向かう。








「黎明!」

そう声かけると

「……双葉。どうしたんです? 僕に、何か用事でも?」

といつものように返す黎明。 尋ねる言葉はいつも同じで、私たちは流れるように口を開いた。

「用事ってほどじゃないんだけど……。これからお昼ごはんの準備?」
「はい。今日は丼ものにしようかと思ってます」
「へぇ」
「鉄火丼はお好きですか?」
「うん、大好き」

即答で答えた。黎明は洋食の方が得意らしいのだけれど、 私が和食の方が好きだと告げてからはちょくちょく和食を作ってくれる。 黎明の作るご飯はどれも美味しいからどちらでもいいのだけれど、 好きなものだとますます美味しく感じるからやっぱり嬉しくなるのだ。

「…………」

けれど黎明は私の顔を見つめたまま、一瞬固まっていた。

「?」

私の視線を感じて、「いえ」と小さく口にすると、

「それで、鉄火丼は……」

と私見つめて再び口にするものだから、

「好きだよ」

私も真っ直ぐに黎明を見つめ返して答えた。





お互い見つめあった状況でその言葉を口にするとなぜか胸がドキドキとし始めて、 まるで別の意味でその言葉を告げたように頬まで熱くなってくる。

「うん、だから……えっと、鉄火丼が……」

そのまま黙っていると変な空気に包まれそうで何とか言葉を紡ぐと、

「そう…ですよね。僕も……その、好き……です」

黎明がポツリと告げた。

「え?」

思わず聞き返した言葉に、

「……鉄火丼……が、です」
「あ、う、うん」

黎明が変に赤くなって答えるから私まで赤くなってしまった。 ……いや、そもそも先に赤くなったのは私の方かもしれない。



いつもと同じだと思っていた休日は、ほんの少し恋色をしていた。



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