カインの侵入を許したあの日から、夜中に目を覚ますと窓を見るのが日課になってしまった。 カインはNEDEがここに攻め込んでくると言っていた。 だからどうしても部屋で一人きりになってしまう夜は、緊張してしまうのだ。

「…………お水、飲んでこよう」

ドアに耳を当てて廊下から物音がしないのを確認すると、 気分を落ち着けるためにそう口にして台所へと向かった。





「お、来たな」
「…………司狼」

台所には先客がいて、私の姿を確認するとニッと口の端を持ち上げた。 眠れない夜を過ごす私が台所に向かうのは司狼にはバレてから、 ここでおしゃべりをするのが日課になっていた。 けれど今夜は珍しく司狼が鍋をかき回していた。

「なに、してるの?」

ここで鍋をかき回すのは黎明の方が見慣れていた私は、隣に並んで鍋の中を覗いた。

「なにって、双葉ちゃんまた寝れないと思ってホットミルクを」
「わぁ、ありがと」

司狼がこうして料理してくれるのが何だか嬉しくて、へへっと私は笑みを零した。 それから他愛ないおしゃべりをしている間にホットミルクは出来上がり、 司狼からマグカップを受け取るとそっと口をつける。 ゴクリとのどを通ったそれは、じんわりと身体を温めてくれるようで何だかホッとする味だった。

「それ飲んだらベッドに戻るといい」
「うん、そうだね」

いくら学校に行く心配がないとはいえ、昼まで寝てたらきっと黎明が怒るだろう。 そうならない為には、そろそろ寝た方がいいのは明白だった。

「ごちそうさまでした」

勿体なかったけれど全て喉に流し込むと、

「じゃ、部屋まで行くか」

と司狼の言葉に促されて私は台所を出た。





部屋から台所まではすぐ近くだというのに、司狼は毎回私を部屋まで送ってくれる。 それがなんだかくすぐったくて、嬉しくて、部屋に戻る頃には不安なんて消えていた。

「送ってくれてありがとう。それじゃ、おやすみ」

そう挨拶をして部屋のドアを開けようと手を伸ばすと、それより早く司狼が私の手を包んだ。

「ちょい待ち、双葉ちゃん」

ドキリとしながらも明るい司狼の声に振り返ると、

「良く寝れるおまじない」

と言ってニッコリと笑う司狼の顔が近付いてきた。

「〜〜〜ッ!!」

思わず目をぎゅっと瞑ると、ふわりと柔らかものが額に触れた。

「ははっ、期待させちまったか?」
「なっ……!」

バッと前髪ごと額を押さえて見上げると、悪戯っぽく片目を瞑っていた。

「そんじゃ良い夢を」

ニヤリと笑って手を上げると踵を返して自室へと戻っていった。 そんな背中を見つめながら、

「これじゃ……また寝れない…よ」

と、ズルズルと私はその場にへたり込んでしまうのだった。



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ありがちなネタですが^^