閻魔王の居眠りイベント後の妄想。お互い触れれると傷を負うという設定で書いてます








初めて会ったその時から、彼の正体に気付いていた。 それは彼も同じこと。 けれど互いにそれを口にしないうちは、知らぬふりをしようと思った。 互いに身分を明かしたところで何が変わるわけではないのだけれど。




「……寝てます、ね」

いつもの特等席で、読みかけの本を胸に彼は寝ていた。

「本当に、自分の立場をわかっていないのでしょうか」

殺してくれと言わんばかりにスヤスヤと彼は寝ていた。 風でふわりとその黒い髪が揺れ、思わずてを伸ばす。

「……っ」

以前と同じように手のひらにずきりと痛みが走った。 触れれば火傷のように皮膚がただれてしまうと分かっていたのに、 それなのに、触れずにはいられなかった。

「……立場を分かっていないのは私ですね」

彼の正体を知りつつも、彼のまとう空気が心地よくて、 私は彼に会わないという選択肢を選べずにいたのだ。

「…………」

以前は呪文を唱えて傷を消した。 けれど、癒えていく傷を見て寂しさを感じた。 彼に触れたという証が消えてしまうのが嫌だったのだ。

「……ばかです。私は」

ポツリと漏らしてぐっと手のひらを握れば、ずきりと痛みが広がった。





「……まったくだ」

ふいにその手に冷たい手が触れた。

「…………ッ」

私が傷を負ったように、彼もまた私に触れれば傷を負う。 如来に授けられた紋章が、彼の負の力から私を守ったからだ。

「は、離して下さい」
「断る」

ゆったりとした、それでいて力強い口調だった。 彼は掴んだ手に力を込めると、そのまま私を引き寄せた。 彼の寝顔を覗き込むようにしていた私は簡単に彼の胸に倒れこんでしまう。

「火傷程度では済みませんよ」
「構わない」
「わ、私が構います」
「そうか」

口では離せと言いながら何の抵抗もできないのは傷を負うのが怖いからではない。 こうなることを望んでる自分がいて、彼も同じ気持ちなのではないかと感じてたからだ。



彼の力強い抱擁を受けながら、このまま彼と死ねたらどんなにいいかと思った。 けれど、残念なことに彼は私を殺さないし、私も決して彼を殺せないのだ。





バッドエンドでも構わない!!




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(雨のイベントを見る前に書いたので、お互い触れると傷を負う設定でそのまま書いちゃいました)