「……平和ですねぇ……」
見上げれば今日も綿菓子のような雲がふわふわと浮かび、
太陽の日差しがさんさんと降り注ぐ中、
子供たちは元気よく境内を走り回っていた。
Θ
今日も平和です! Θ
「玄奘せんせー」
そういつものように声をかけ、男の子の一人がドカッと腰に抱きついてきた。
「急に抱きついたら危ないですよ」
身を捻り男の子の頭をふわりと撫でて、私は口を開く。
「へへ。だから先に声かけただろ?」
「できたら今度からはもう少し早く、声をかけて下さい」
あれから月日は流れ、子供たちも更に大きくなった。
流石にこの調子で抱きつかれていけば、いずれ私は吹っ飛ばされてしまうだろうと思った。
「はーい」
そう男の子が返事すると、
「…今度、なんか……ねぇに、決まってん…だ…ろ。……今の…で……最、後……だ」
ゼェゼェと息を切らせながらやってきた悟空が男の子をベリッと引き剥がした。
「何するんだよ」
「何する、じゃねぇ。玄奘は俺のだって言ってるだろう」
なおも私に抱きつこうとする男の子を羽交い絞めにして、悟空は口を開く。
「いいか? 本当は俺はお前らの相手なんかしないで玄奘とゴロゴロしてたいんだ」
「……悟空、子供の前で何を言っているんですか」
一緒にいたいと素直にそう言ってくれるのは嬉しい。
けれど、子供たちの相手をしないわけにはいかない。
和尚様はまだ今までの疲れが癒えていないのだ。少しでも恩返しをしないと。
「んだよ。こっちきてからお前がずっと和尚様だ、ガキの面倒だ言ってるからだろ?」
「……つまり、子供たち相手に妬いているんですか?」
まさか、と思いながらも尋ねてみた。
途端に悟空の顔が赤く染まるものだから、私も男の子も一緒になって吹き出してしまった。
「悟空、だっせー。そんなんじゃおれの玄奘せんせーは任せらんねーな」
悟空が固まった隙に逃げ出した男の子は、ゲラゲラとお腹を抱えて笑っていた。
「だっ、誰がテメーのだ。玄奘は俺のだっつってんだろ」
「キスもできなかったくせに。このこんじょーなし」
そう言って男の子は悟空の脛を蹴りあげた。
「うぐっ…」
あれは痛い。自分が蹴られたわけでもないのに、思わず私まで顔をしかめる。
男の子は悟空を蹴ったことで満足したのか、逃げ出した。
「って、待てこのクソガキ…」
「悟空」
すぐに追いかけようとする悟空の腕を掴むと、振り返った悟空めがけて背伸びした。
あの時未遂で終わった口付けを、私から仕掛けたのだ。
「玄…奘」
驚きで目を大きく開く悟空に私はにっこりと笑う。
「悟空の幸せが私であるように、私の幸せも悟空、あなたなんです」
過去を、力を。人間となって全て捨ててしまった悟空。
それでも私が傍にいるだけで幸せだと彼が言ったのだから、何も心配することなんてないのだ。
「だから、変なヤキモチなんて妬かず、ちゃんと子供たちの面倒、宜しくお願いします」
その言葉に悟空は「あぁ」と笑い、私を抱き寄せた。
「でも、いい加減相手してくんねーと俺も拗ねるからな」
「はい。善処します」
顔を見合わせにっこり笑い、私は家事の続きを、悟空は子供たちと遊ぶため、先程の男の子を追いかけた。
空を見上げればやっぱり綿菓子のような雲がふわふわと浮かんで、
昨日と同じ、当たり前の毎日が、幸せだと実感した。
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ED後でラブラブ。EDでは未遂だったから、きっと子供たちと遊ぶ玄奘にずっと嫉妬してればいい。
リクエストありがとうございました!