Θ ポッキーゲーム (※学パロです) Θ
なんでかしんねーけど、教室に入ろうとしたオレに、千鶴はポッキーの箱を差し出した。
朝からお菓子って気分でもなかったけど、せっかく千鶴がくれたのだから、
一本取り出すとカリッと口にくわえる。
それを見届けた千鶴は口元に笑みを浮かべる。
「ん?」
怪訝に思ったオレの目の前で、口から伸びたポッキーに急に千鶴が齧り付く。
そのままカリカリと食べ進めるから、千鶴の顔が段々と近づいてくる。
もしかして、このままオレがジッとしてたら千鶴とキスできんじゃねーかと思わず期待した。
目の前には千鶴の顔。幼馴染で自慢の友人で、
ガキの頃から知ってる顔のはずなのに、なぜか知らない女に見えた。
鼻先が触れ合いそうなほどの近くに千鶴がいて、あともう1センチといったところで、
「…ッ!」
我慢できなくなったオレは自分からポッキーを折った。
「…残念」
千鶴は言ってペロリと唇を舐めると席に着いてしまった。
残されたオレは馬鹿みたいにその場に立ち竦んでいた。
「どした? 平助」
「……新八っつぁん」
呆然と立ち竦むオレに、廊下から新八っつぁんが声をかけてきた。
「真っ赤だぞ。熱でもあんじゃねーのか?」
なんて言われて自分の顔の赤さを自覚した。
千鶴は全然平気な顔をしてたのにオレだけが千鶴を意識してしまったらしい。
「あぁ、クソッ」
「なんだよ」
新八っつぁんの言葉を無視してオレもさっさと自分の席についた。
知ってしまった感情は、口の中に広がる甘さに似ていて頭がくらくらしそうだった。
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