悪戯っぽく告げた私の言葉に永倉さんが期待するような眼差しを向けるから、
「内緒です」
と私は小さく笑った。
Θ 幸せは君の形 Θ
「しっかし、俺も千鶴ちゃんもずいぶん探したってのに見つからないとなると……、
ほんとにあんのか怪しいなぁ…」
私の隣で永倉さんは残念そうに呟いた。けれどそんな永倉さんとは反対に、
「大丈夫ですよ。ちゃんと見つかります」
そんな確信があった。
だってこんなにたくさんの時間を永倉さんと過ごしたのは初めてだからだ。
それだけでも私にとっては奇跡のようだ。
「それに、もし見つからなかったとしても、こうは考えられませんか?」
言って私は今日の記念にと持ち帰った三つ葉を指でつまんでみせた。
「元々あそこの葉は全部が四つ葉だったんです」
つまんだ三つ葉の空いた場所に、指でなぞるように葉を描く。
「でも、誰かがわざと一枚ずつ取ったって」
「その誰かってのは、ずいぶんと総司みてーな奴だな」
私の話を聞きながら、永倉さんはぶっと笑った。それだけで私の心もポカポカになる。
「ふふっ、でも四つ葉が見つからなかったおかげで、気づいたこともありますよ?」
そう永倉さんを見上げると彼の目が続きを催促しているように感じたので口を開いた。
「永倉さん自身が、四つ葉のおまもりみたいだなって……」
「ぶっ……!」
隣で噴き出した永倉さんを、私は目を細めて見つめる。
「だって、永倉さんが笑ってくれるだけで私とっても嬉しくて幸せですもん」
見る見るうちに真っ赤に染まるその顔に、私は再び笑った。
その素直な反応が、すごく好きだと実感した。
「だから、葉が見つかっても見つからなくても、私を幸せにするのは永倉さんだけなんです」
言ってぎゅっと手を握りしめると、バッと驚いたように手を振り払われてしまった。
しまったと明らかに後悔したその顔に、私は背中を押されたように再び手を握る。
「……千鶴ちゃんの手が……、その、汚れちまう……だろ?」
「私の手だって土をいじっていましたし、気にしません」
「……だ、だけどよ」
まだ決心のつかない永倉さんの目をジッと見つめ、私は口を開く。
「永倉さんは私と手を繋ぐの……嫌ですか?」
驚いて振り払ったと分かっていても、一度拒絶されたことは事実だ。
だから、言葉できちんともらえないと、私はいつまでも不安なまま。
「いやじゃ……ねぇよ。けど……その」
視線を何度かさまよわせたあと、決心したように顔を上げた。
「……俺にとっても……、そうだからな」
ジッと私の目を見つめたまま、真っ赤な顔で永倉さんはポツリと告げた。
けれどその声があまりにも小さくて、私は「え?」と聞き返してしまった。
「だから、俺にとっても千鶴ちゃん自身が……その……っ」
続けられるはずだった言葉は、真っ赤になった永倉さんの口から語られることはなかったけれど、
汗ばんだ手から伝わる熱のせいか、私まで真っ赤になってしまった。
» end