Θ [10] おでこにチュー (キュンとくる10のお題) Θ
見上げた先には驚くほど真摯な顔をした永倉さん。
その真っ赤な顔でジッと私を見つめるものだから、私まで真っ赤になってしまう。
心臓の音が相手に聞こえてしまうんじゃないかというほどに、
私の胸は永倉さんの言葉にどきどきと騒ぎ立てていた。
永倉さんが私を好いているらしいと平助君から聞いてから、
私はずっと永倉さんが気になっていた。
けれどどんなに待っても、彼がその想いを口にすることはなくて、
じれったくなった私は自分から想いを告げた。
永倉さんは目をまん丸にして、それから何度も私に確認をした。
だから私は、何度も愛の言葉を口にした。
けれどそれから私たちの関係が変わることはなくて、
進歩したといったら誰もいないときに手を繋ぐようになったことぐらいだ。
そんな相手から、「口付けていいか?」なんて聞かれたのだ。
私は馬鹿みたいに黙ったまま永倉さんを見つめる。
「やっぱ……駄目か?」
そう寂しそうに呟くものだから、
「駄目じゃ……ない……です」
と私は慌てて口を開いた。
永倉さんは「そか」と短く返事して、私を見つめる。
それから、
「い、行くぞ」
なんて言って、ゆっくりと顔を近づけてきたのだけれど、
恥ずかしくなってしまった私は身を固くしてぎゅっと目を閉じた。
想像した感触が唇とは別のところに送られて、
私は目を開けると同時に額を押さえた。
「無理強いはしねーって。ゆっくり行こうや」
と永倉さんは笑った。
どうやら私は永倉さん以上にこの手のことに弱虫だったらしい。
それでも、永倉さんがゆっくりでいいと言ってくれたから、
私は私の速度で永倉さんに答えようと思った。
(つか、あんな千鶴ちゃんに接吻しちまったら俺のが止まんねーし)