Θ [05] 寝た時の半開きの口 (キュンとくる10のお題) Θ
目が覚めたら永倉さんの肩を枕にしていた。
状況が飲み込めず混乱する頭で何とか記憶を呼び起こす。
確か今日は縁側で、薩長との戦いについての考えを聞かせてもらっていたはずだ。
「そっか。私が寝ちゃったから……」
動けなかった永倉さんもそのまま眠ってしまったのだろう。
「……でも、永倉さんが寝てる姿を見るのって新鮮かも」
そう思ったらこんな好機は二度と無いような気がして、
マジマジと永倉さんの顔を見つめる。
「なんか……寝顔ってすごく可愛いかも」
私より年上のせいか、格好良い印象が強かった。
だから可愛いと感じたことも新鮮で、思わず笑顔になってしまった。
「きっとこの半開きの口が可愛さを強調してるんだろうな」
思わず注視していると、唇がもごもごと動いた。
変な寝ごとを言ったら後で教えてあげようかな、なんて期待していたら、
「……千鶴…ちゃん……」
私の名前が飛び出すから心臓が止まるかと思った。
ついさっきまで私とお話してたのだから、
夢に私が出てきてもいいのだろうけれどなんだか恥かしい。
それに、
「私は目の前にいるんだから、早く起きてくれればいいのに」
そう思ったら夢の中の自分に少しだけ嫉妬心を覚えて、
私は頬を膨らませて永倉さんの目が覚めるのを待つのだった。
(な、なんで千鶴ちゃん怒ってんだ? 俺、まだ寝てた方がいいのか?)