Θ しあわせはネコのかたち Θ
見慣れないものを見つけた。
縁側で庭を眺める後姿は、もしかしたら初めて見たかもしれない。
こんなところで何をしているのかすごく気になって、そっと近づくと、
「……おまえなぁ……」
と、急にそんなことを言うからビクリと足を止めた。
けれど、それは私に向けられた言葉ではないようだ。
「……ったく。ここでじっとしてろ」
そう言った土方さんの膝で、猫が「にゃー」と鳴いた。
土方さんと猫が結びつかずしばらく固まっていた。
そんな私に土方さんが気づかないわけがなく、
「なにしてやがんだ」
とため息混じりに告げられた。
「あ…あの、土方さんが縁側にいるのって珍しいなって」
ごにょごにょと告げながら土方さんの隣にしゃがみ込んだ。
真っ白なその猫はすっかり土方さんに懐いているようで、彼の指にゴロゴロと喉を鳴らす。
「俺だって休憩するときもあんだぞ」
「で、ですよね。すみません」
変なことを言った自覚があったから謝罪したのに、
「なんで謝るんだ?」
「あぅ……」
更に突っ込まれ返答に困ってしまった。
けれど土方さんはそんな私を放置して、膝の猫を可愛がる。
「あっ……」
その顔があまりに優しいから、つい声を出してしまった。
「どした?」
「いえ……」
それをそのまま口にするのはなんだか恐れ多かった。けれど土方さんは
「いいから。言ってみろ」
と言葉を促す。
「……うらやましかったんです」
私は正直に告げた。
「私はまだそんな優しい顔を見せてもらったことないのに……」
猫は一瞬で土方さんの心を開いたのだろう。
それがうらやましかった。そう続けると土方さんは私に向かって笑った。
「おまえが猫ならなでてやるよ」
それはどういう意味だろう。
私は猫ではないから諦めろと遠回しに言われたのか、
それとも、猫のようにおとなしく膝に乗れと言われているのか。
「(って乗っかるのは絶対違う気がする)」
土方さんは反応を楽しむかのように私をみている。
「……にゃあ」
どうしていいかわからずポツリと呟くと、
「バカかてめーは」
と言われてしまったけれど土方さんは約束通り頭を撫でてくれた。
その手がとても優しくて、私はますます猫に嫉妬した。
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