Θ [02] 何度も何度も好きだという愛おしい唇 (身体の部分) Θ
思わずこぼれた言葉に、原田さんは目を真ん丸に見開いていた。
彼のこんな顔を見るのは初めてだったから、
それぐらい原田さんにとって予想外のことだったのかと思ったら、
悲しくて私の顔がくしゃっと歪んだ。
「……好き…なんです」
いつまで経っても彼の中では私は妹のような存在で、
「原田さんが……好き……」
対等に見られていないのはわかっていたけれど、
「……好き、大好き……」
触れられるたび、
優しくされるたび、
笑顔を見せられるたび、
私の小さな胸はこれ以上無理だっていうぐらいに加速して、苦しくて、
「……好きです……」
何度告げたら原田さんに届くのか、
何度告げたら女の子としてみてもらえるのか、
それすら分からなくて、
私は馬鹿みたいにその言葉を繰り返した。
「原田さんのことが……」
「……もういい」
原田さんが静かにそう告げるから、私はビクッと身を震わせて言葉を切った。
彼は怒っているのか迷惑がっているのか、それすらも見る勇気がない。
けれど、
「あのな」
といつものように優しい声音と、ポンと頭に触れた手にゆっくりと顔を上げると、
珍しく顔をうっすらと赤く染めた原田さんが目の前にいた。
「そういう大事な言葉は一度聞きゃー十分なんだよ」
そのまま両手で抱きしめられてしまったから、
今のはもしかして私の目の錯角なんじゃないかと思ったのだけれど、
耳に届く心音が私のと同じぐらいドクドクと脈打っているから、
口元がだらしなく緩んでしまった。
(こんなに幸せでいいのかな)