封神台に封じられてから、私たちは幸せだった。
家を見つけて、台所で毎日二人分の食事を作って、ふたりで一つの寝台で眠る。
妲己ではないけれど新婚のようだと私も思ったのは内緒の話だ。
Θ
しあわせのカタチ Θ
「そうだ。俺、働くよ」
そんなある日、突然妲己が宣言した。
「働、く?」
目の前の男と仕事が結びつかなくて首を傾げると、
「なんだかんだ言って今の状況って楊栴に食わせてもらってるからヒモじゃん?」
と妲己。
「だから、今日からは俺が食料調達係ってことで」
「あぁ、そういうことか」
「何だと思ったの?」
「いや、お前のことだからまた何か悪だくみでも始めたのかと……」
本心を告げると妲己はがっかりと肩を落としたようだ。
「あーぁ、これから真面目に働こうって思ってたのに、楊栴にやる気をそがれて仕事する気なくなっちゃったよ」
「……、もともとあったかも怪しいな」
「えー」
不満げな声を上げつつ、妲己はニヤニヤと笑っていた。
「楊栴がチューしてくれたらまじめに働いてもいいけどなー」
「さっさと行け!」
口付けの代わりに蹴りをお見舞いしてやると、
「あーぁ、俺の奥さんってば暴力的で困っちゃうんだよねー。まぁ、そこが可愛いんだけど」
などと意味のわからないことを口にして妲己は玄関から出ようとした。
けれど、
「あ、忘れものした」
「ん?」
妲己が持っていく荷物などあっただろうかと首をかしげていると、
「愛してるよ、楊栴」
と言って、彼は勝手に私の唇を奪うと上機嫌で玄関を出ていった。
「なっ……!」
突然のことに呆けたままの私に、
「帰ったらおかえりのチューよろしくねー」
「二度と帰ってくるな!」
誰もいないのをいいことに力の限り叫んでやると、妲己はヒラヒラと手を振った。
「なんなんだ、まったく」
相変わらず妲己には振り回されてばかりだけれど、
悔しいことにこんな生活が私にとっては幸せらしい。
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たまにはこんなバカップルもありだと思います^^