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おやすみなさい Θ
「そうだ! 今日は一晩中起きていよう」
名案とばかりに声を上げると、楊栴はにっこりと笑って同意してくれた。
そのことが嬉しくて、うんうんと何度も頷くと彼女を部屋へと誘った。
あのまま中庭で星を眺めながらおしゃべりしてもいいけれど、彼女が風邪をひいたら心配だ。
二人でベッドに横になって向かい合うと、ぎゅっと身体を抱きしめた。
「姫発、まだ師匠たちがいらっしゃるのですから……」
そう言ってやんわりと逃れようとするけれど、
「みんなが見てるからさっきは怒ったんだろう? なら、今は二人きりだよ」
にっこりと笑顔で答えると、彼女は諦めたように息を吐いた。
彼女を困らせたくないのだけれど、楊栴は最終的には何でも許してくれるから、つい甘えてしまう。
「それで、何の話をしようか?」
そう言って楊栴に伺えば、
「姫発の話が聞きたいです」
と彼女は笑った。
そのことが嬉しくて、僕はたくさん話をした。
楊栴と出会う前の僕。
楊栴と出会ってからの僕。
それから、楊栴が居なくなってからの僕。
「だから、街で君を見かけたときは本当にうれしくて……」
「…………ん」
ペラペラと喋り続けてふと彼女を見つめれば、今にも寝そうな楊栴が目の前にいた。
「楊栴?」
「……聞いて……ます。ちゃん……と、聞いてる……から、聞か……せて……下さい」
眠たい目をこすりながらそう告げる彼女がいとおしくて、
今すぐ国中のみんなを呼びたい衝動に駆られた。
「あ、でもさっきもそれで怒られたんだっけ」
こんなに可愛い人が僕の大切な人なんだと大声を上げたいのだけれど、
楊栴はそういうのは自分だけのものにしたいと言っていた。
「独占したいだなんて……可愛い」
思わず笑うと目の前の楊栴が首をかしげたようだ。
「あ、ううん。こっちの話。それより眠いなら寝てもいいよ」
「ですが……、一晩中起きている約束……です」
一晩中会話して、朝になったら真っ先に楊栴に口付けする。
そう約束したばかりだったけど、眠そうな彼女にこれ以上起きていろというのは酷だった。
「君はもうどこにも行かないんでしょ?」
「もちろん……です」
「なら、目が覚めても僕の腕の中なんだからいいよ。起きたらおはようのキス、してあげるから」
僕の言葉に彼女は頬を緩めた。
それからすぐに小さな寝息が聞こえ始めた。
「寝顔も可愛いなんて反則だよ!」
笑顔も可愛くて大好きだけど、こうして安心しきっている寝顔も大好きだ。
「約束したばかりだけど……、約束は守れないや。ごめんね」
楊栴の唇に柔らかな口付けを落とすと、僕もそっと目を閉じた。
夢の中で楊栴に口付け出来ますようにと願いながら。
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秘密の巻物の続きを妄想。たぶん我慢できなくてチューしたと思ったのは私だけじゃない!!