詫びがしたいとレインに言われ、私は彼と一緒にファームの外にいた。 レインはどこか目的があるようで、どんどんと先を歩いてしまう。 私はその背中を見失わないように必死について行った。



Θ プレゼント Θ





たどりついた場所は、服屋だった。それも、女性物の服屋だ。

「レイン、あの……?」

意図が分からず訊ねると、

「その、怪我を負わせたときに服も切り裂いただろ?」
「でもこれは、ネロだから大丈夫」

そう答えると、

「俺の気が済まないんだっての」

と言って、レインは私の手を掴むと店の中に入ってしまった。

「金の心配は済んな。好きなもん選べ」
「選べっていっても……」

私は服への関心はない。 エクリプスが昔着ていた服をいくつか貰ったけれど、結局いつもの恰好をしている。

「どうせ着ないから……」

そう言って断ろうとすると、

「買うんだから着ろよ」

レインはきっぱりと告げた。

「だったら、エクリプスがくれた服がたくさんあるから……」

これ以上はいらないと断る私に、

「お下がりじゃなくて、俺がおまえに贈りてーの。詫びだっつってんだろ」

と、レインは譲ってくれない。

「わ、わかった。でも服のことは本当に分からないから、レインに選んでもらいたい」

そう告げると、

「おっし。任せとけ」

嬉しそうにレインは答えた。




「ほれ、これにこれを合わせて着てみろ」

そう言っていくつかの服と一緒に、私を試着室に押し込めた。

「え? え?」
「開けねーから、安心して着がえろ」

困惑する私にそう告げると、レインはカーテンを閉めた。 仕方なく私はレインの選んでくれた服に袖を通すことにした。 レインの選んでくれた服は、柔らかい素材の黒いワンピースだった。 普段の服と同じ色だから抵抗なく着れたし、合わせたカーディガンも着やすかったのだけれど

「…………短い」

足がスースーする。 やっぱり脱いでしまおうと思っていると、

「着たか?」

そう言ってレインはカーテンを開けた。

「レ、レイン!!」

驚いて抗議の声を上げるけれど、彼はまったく聞いていないようだ。

「いーんじゃねーの?」

頭の先からつま先まで視線でなぞったレインに、

「……丈が短い」

と私は呟いた。

「おまえがいつも着てる服もそんなもんだろ」
「あれは、ショートパンツだから気にならない」

と反論したのだけれど、

「よし、そのまま着て帰るか。すんませーん」

レインは全く聞いてくれない。 店の人を呼ぶと支払いを済ませ、今まで着ていた服を入れる紙袋まで貰っていた。





「……ネロが居ないから落ち着かない」

店をでて、もと来た道を戻りながら、勝手すぎるレインに私は告げた。 もともとは私へのお詫びだったはずなのに、私の意見が反映されていなかった気がする。 不服そうに頬を膨らませると、

「最初からそれが狙いだ」

私の反応を笑いながらレインはその頬に口付けた。

「それにだ。男が女に服を贈る意味なんて、一つしかねーだろ」

悪戯っぽく笑うレインに、

「意味?」

と首を傾げると、

「その服を脱がせる下心があんに決まってんだろ? 嫌とは言わせねーけど」

とレインは笑って上機嫌に歩き出した。 私はただただ真っ赤な顔でそのあとをついて行くことしかできなかった。




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ネロがいると手が出せませんww