待ち合わせ場所に現れたオトメちゃんを、私はまじまじと見つめてしまった。
「もう。そんなに見ないでよ!」
「ご、ごめん」
とっさに謝ってしまったけれど、私はまだオトメちゃんを見つめていた。
だって、今日のオトメちゃんは男の子の格好をしていたからだ。
Θ
君に釘付け Θ
「もう、行くわよ」
口調はそのままで、オトメちゃんは私の手を掴むと歩き出した。
いつもと同じオトメちゃんのはずなのに、姿が違うだけでこんなにもドキドキしてしまう。
「ん?」
反応を示さない私に気づいて、オトメちゃんの足が止まる。
「どうしたの?」
いつものように小首を傾げているのだけれど、私はどきりとしてしまう。
「……なんで」
「え?」
「その恰好……」
どうして今日に限って男の子の姿で来たのだろう。
心臓がうるさいほど騒ぎ立てて、どうすればいいのか分からなくなってしまう。
「変?」
問いかけられて、私はぶんぶんと首を振った。
「……すごく、カッコいい……です」
「あ、ありがと」
私の言葉に、オトメちゃんはほんのりと頬を染めた。
「その、ね。以前あなたとデートした時に、ナンパで怖い思いさせたじゃない?」
その言葉に私は以前、公園での出来事を思い出していた。
ナンパだと気づかず、馬鹿正直に応対してしまった。
そんな私を助けてくれたのはオトメちゃんだった。
「アタシが傍にいたのに悔しかった。それに、他の男があなたに声をかけるなんて、許せないの」
きっぱりと言い切ったオトメちゃんに、
「それだけ?」
私はそんなことを口にしていた。
だって、あのオトメちゃんが男の子の格好をするなんてよっぽどのことがあると思っていたのだ。
「それだけって……! アタシには大問題なのよ!」
怒ったように告げるオトメちゃんに、私は思わず笑ってしまった。
「ちょっと、なに笑ってるのよ」
「……だって」
まさか自分のためだなんて、思ってもいなかったのだ。
「オトメちゃんがそんなに私のこと考えてくれてるなんて、思ってもなかった」
「な、なによ……」
素直に告げると彼は拗ねたように口を尖らせた。
「でもさ、オトメちゃん」
「ん?」
「オトメちゃんが男の子の格好してると、私も心配だよ」
「どうして?」
大きな目をパチクリとさせるオトメちゃんは、本気でわかっていないようだ。
男の子の格好をしている自分が、すごくカッコいいことを。
「だって……その、オトメちゃんすごくカッコイイもん」
繋いだ手に力を込めてそう口にすると、
「あら、そんなの心配無用よ」
にっこりとオトメちゃんは答えた。
「だってアタシにはあなたしか見えてないもの」
その言葉を合図に、私たちはデートを再開した。
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お互いがメロメロでヤキモチ妬いてるといい。