「また来るか?」
正様の言葉に思わず反応を示した私に、
「言ってみただけだ」
と彼は意地悪なことを言ったけれど、
ちゃんと二度目の機会を作ってくれた。
Θ 恋の味 Θ
「はい、どうぞお召し上がり下さい」
以前と同じようにシュウクリイムを小さくして差し出すと、
彼は満足げに口へと運んだ。
そんな姿を見て、私もがぶりとシュウクリイムにかじり付いた。
「お前な、少しは恥じらいをもて」
口一杯に頬張った私に正様は呆れたように口を開いた。
「私にしたように、お前の分も小さくすれば良かっただろう。大した手間でもないものを」
「ですが、これはこうした方が美味しいんです」
こういう高価なものは、口一杯に頬張るからこそ満足感もあり美味しいのだ。
けれどいつでもこういうものを食べられる正様には、私の気持ちなどわからないのだろう。
「味など変わらんだろう」
あっさりと返されてしまった。
「変わります」
私はそう言って再びシュウクリイムにかじり付いた。
「まったく。お前は言うことを聞かない使用人だ」
そう言って正様の手が、私の方へと伸びる。
どうしたのかと視線で追いかけると、ぐいと私の頬を拭った。
その様子に、頬にクリイムがついてしまったのかと理解したと同時に、顔が赤くなる。
「どうしたらこんなところにつくんだ」
クリイムを拭い取られただけでも恥ずかしいというのに、
あろうことか正様はその指をペロリと舐めてしまうから、
私は両手で握っていたシュウクリイムをお皿の上に落としてしまった。
「ふむ。確かに以前食べた物より少し甘いか?」
悪戯っぽい正様の視線にハッとしながら、慌ててシュウクリイムを拾い上げた。
「し、知りません」
そう言って口に運んだシュウクリイムは憧れのパーラーのものなのに、
私には正様の行動が強烈すぎて、味なんてさっぱり分からなかった。
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