風邪が治ったばかりだと言うのに、ウキョウは相変わらず公園の芝生で昼寝していた。
「またこんなところで寝て、風邪引くよ」
そう声をかけると、
「キミも寝そべってみたらいいよ。ホントに気持ちいいから」
とウキョウは私の手を掴んで引き寄せた。
Θ
ぎゅっ Θ
諦めたようにウキョウの隣に腰を下ろすと、彼は満足げに微笑んだ。
「もう風邪は平気なの?」
つい心配でそう尋ねると、
「平気、平気。キミが看病してくれたから、すぐ治ったよ」
にっこりと笑う。
「そっか。なら良かった」
店で会うたびに私はウキョウの心配ばかりしていたけれど、数日が経過してようやく安心できた。
「キミの方こそ、風邪引かなかった?」
芝生に寝そべったまま、ウキョウは訊ねる。
「うん。私は大丈夫」
にっこりと笑って答えれば、
「そっか。ちょっと風邪で弱ったキミも見たかったんだけどな。残念」
とウキョウは苦笑した。
「でもさ、最近ちょっと元気ないよね」
「え?」
ジッと私を見つめたまま、ウキョウは訊ねた。
「お店行っても元気がなさそうだし、何か心配ごと?」
身体を起こして真正面から私を見つめる。
「心配って言うか……その……」
口ごもっていると、ポンポンとウキョウの手が私の頭を撫でた。
「キミは俺の彼女なんだから。遠慮なんてしないで何でも言ってよ」
その言葉に私は口を開くことにした。
「最近、ウキョウのお仕事が忙しいでしょ? 朝はお店でご飯食べてくれるけど、あまりデートが出来なくて」
風邪をひく前と会うペースが変わったわけではない。
ただ、私にとってウキョウの存在がとても大きかったことを実感したあの日から、
ウキョウにとって私の存在はどうなんだろうと考えてしまうようになったのだ。
「今日だって久しぶりに会うのに、私だけ楽しみにしてたみたいだから」
そう告げると、
「えぇ?! どうしてそうなるの?」
ウキョウは驚いた声を上げる。
「だって、いつもと同じ態度なんだもん」
拗ねたように視線を逸らして口を尖らせてそんなことを口にすると、
「あのねぇ。俺はキミが思っている以上にキミにゾッコンなんだよ。
いつもと同じって言うけど、いつもキミを前にするだけでドキドキしてるんだから」
「……え?」
思ってもいなかった言葉が返された。思わず顔を上げ彼を見つめると、
「どうしたら信じてくれる?」
ウキョウは首を傾げて尋ねた。
「俺の仕事は不定期だから、減らすとかは無理だけど。俺がキミにゾッコンだって信じてくれるなら、何だってするよ」
「……じゃあ、抱きしめて。そうしたら、寂しいのも我慢できるから」
「えっ?!」
私の言葉にウキョウは自分の両手を見つめる。
「だ、抱きしめるって、俺が、キミを?」
「うん」
「こ、この両手で?」
「うん」
「えーと、どのくらい?」
「…………嫌、なの?」
ウキョウの反応に何だか不安になってしまった。
「そ、そうじゃないよ!そうじゃないんだけど!俺、キミを抱きしめたら恥ずかしすぎて死んじゃうかもしれない」
そんなことを口にしながらウキョウは少し困ったように照れると、私を引き寄せ腕の中に閉じ込めた。
自分から言い出したことだけれど、何だか無性に恥ずかしくなってしまった。
「はぁー。ほんとごめんね。俺の心臓うるさいでしょ?」
そう言ってウキョウは私の肩に顔をうずめたのだけれど、
自分の心臓も同じようにうるさくなっていてそれどころではなかった。
「俺の気持ちを信じてもらうためにしたことだけど、キミとくっついていると俺、元気出るんだ」
「わ、私も」
「ん?」
「私もウキョウとくっつくの好きだよ」
「そっか」
お互いにくっついているから表情は見えなかったけれど、ウキョウは笑ったようだ。それだけで心が温かくなる。
「ウキョウ、もっとぎゅっとして?」
「ん?」
「ウキョウが忙しくても明日からまた頑張るように充電するから」
そう言って私もぎゅっとウキョウを抱きしめながら、
「大好きだよ」
と、彼が元気になる魔法の言葉を口にした。
» end
オールキャラ本ウキョウの続きです。た、単品じゃ読めなかったかな^^;