踏切で運よく遮断機が下りて、彼女といられる時間が少しだけ伸びた。 この瞬間、俺は神様の存在を感じた。 彼女に今日こそ告白しようと決めたものの、 そのタイミングを逃していたヘタレな俺に、 「今、言うんだ」と背中を押してもらったような気がしたからだ。





Θ 好きの上限 Θ





あの時の告白のおかげで、俺は彼女と恋人同士になった。 ずっとずっと願っていたことなのに、いざ現実になってしまうと少し怖い。 恋人になりたいという願いが叶ったら、彼女に触れたいという別の願いが強くなったからだ。

「ウキョウ?」

ぼんやりとした俺に気づいて、彼女は心配そうに顔を覗き込む。

「うわぁ!」

予想外に近い距離に、俺は思わず後ずさりした。

「ち、ちちち、近いから!」
「だって、一緒に帰っているんだもの。前後に並ぶ方がおかしいでしょう?」

彼女の言葉は正論だった。 昨日までは隣に立つことは平気だったのに、今日は口から心臓が飛び出しそうなぐらい緊張している。

「…っていうか、え? なんで君と二人っきり?!」

現状が理解できずに思わず口にしてしまった。

「人気のない場所で俺と二人っきりになってはいけません」

そう告げると、

「いつも通りバイト帰りだけれど?」

彼女は首を傾げた。 告白する前から、バイト帰りの彼女を家まで送ることもしていた。 もちろん、今みたいに遅い時間になることもあって、彼女の身が心配で送っていたのだ。 けれど今は、別の意味で心配だ。

「俺に気を許しちゃいけません」
「彼氏、なのに?」
「かっ……!!」

彼女の言葉に思わず赤面してしまっ

「か、彼氏だからなおさら駄目です」
「どうして?」
「今までは恋人でもないのにって遠慮してたけど、彼氏になっちゃったから変なことしない自信が全然ないからね!」

胸を張って答えた俺の言葉に、

「変なことってどういうこと?」

何故か彼女は食いついてきた。

「へ、変なことって……その、君…に、触れたり……」
「触れるって手を繋ぐこと? それなら付き合う前もしてたよ?」

「そ…それだけじゃなくて……その、……その先、も……」
「ねぇ、ウキョウ」

彼女はまっすぐに俺を見つめた。 けれど、その目は少し熱っぽくて、俺をいつも以上にドキドキさせた。

「私は、ウキョウとだったらその先も……いいよ?」

その台詞が聞こえた瞬間、俺はもう彼女を抱きしめていた。





どこまで触れていいのだろう。どこまでなら彼女を怯えさせないだろう。 いつもそんなことばかり考えていた。
恋人になれれば全部丸く収まると思っていたのに、 恋人になったら彼女に嫌われたくないと、付き合う前より強く思うようになった。

「私は、ウキョウに触れたいし、触れて欲しい」

彼女の告白に思わずゴクリと唾を飲み込んだ。 触れたらきっと、すぐに別の欲求が生まれる。 分かっているのに、もう止められそうにない。

「マイ……」

じっと彼女の顔を見つめて名を呼ぶと、それが合図だったかのように彼女は目を閉じた。 唇が触れた瞬間、彼女をもっともっと好きになっていくのを感じた。 尽きることのないこの想いが少し怖くて、けれど、永遠であればいいと思った。



» end

途中から書いててよくわからなくなった。ウキョウさんの「好き」は果てしないなぁと思ったらこんな話に。