今日もウキョウは神田川公園の芝生で、気持ち良さそうに寝ていた。
待ち合わせ場所は公園の入り口だったはずなのに毎回芝生で寝るから、
こちらの方が待ち合わせ場所になってしまった。
「こんなところで寝て。風邪引くよ」
ようやく見つけたウキョウにそう声をかけると
「何だか癖になっちゃって」
と、ウキョウは困ったように笑った。
Θ
しあわせな日常 Θ
折角のデートだというのに、ウキョウは私が見つけた後もまた目を閉じて芝生に寝転んだ。
私はその隣に腰を下ろして、彼の寝顔を眺めるのがお決まりのパターン。
「……あの、見られると寝れないんだけど」
少し頬を赤らめて告げるウキョウに、
「寝かせない為に見てるんだもの」
と私は笑って答えた。
毎回毎回ウキョウの好きにさせているけれど、私だって学習している。
ウキョウが眠ってしまったら退屈だし、寂しい。
だから今日は寝かせないと決めていたのだ。
「あ、でも。私も一緒に寝たらいいのかも」
それならウキョウは好きなだけ寝ていられるし、私も退屈ではなくなる。
手を合わせ名案だとばかりに告げたら、
「だ、だめだめ。そんなのいけません」
ガバッと起き上がったウキョウは、
「悪い人に悪戯されたらどうするの? 世の中にはいい人ばかりじゃないんだからね。君は人を信じすぎる傾向だから、悪い人の方が寧ろ多いと思ってくれなきゃ。そのいい例が俺だからね。だって、君が無防備に俺の隣で寝るなんて何するか分からないよ、俺が。それに、誰が来るかもわからない場所で君の寝顔を大安売りするなんて、そんなの駄目だ。勿体ない!」
と、力説した。
「ああでも俺だけ眠って君にだけ起きてろって言うのも悪いよね……」
一応悪いという自覚が合ったようで、「ごめんね」と呟くとそのままうーんと考え込んだ。
そして、
「あぁ、こうすればいいのか」
一人で納得したウキョウは、ごろんと私の膝に頭を乗せた。
「ウキョウ?!」
驚く私の顔を見上げて、ウキョウはにっこりとほほ笑むと、
「うん。これなら俺も嬉しいし、周りにも君が俺の彼女だって宣言できる」
なんて満足そうに口にした。対する私は落ち着かなくてそわそわしてしまう。
「こ、これじゃあウキョウの顔、私に丸見えよ?」
落ち着いて眠れないんじゃないかと告げると、
「いいよ。君が俺の顔を見るつもりなら、俺からも君の顔丸見えだから」
なんて笑って答えた。これではいっきに形勢逆転だ。
「……ずるい」
ポツリと呟くと、
「じゃ、ずるいついでに……」
なんて言って、ウキョウの手が伸びて私の頭に添えられた。
キョトンとしている間に、彼は体を持ち上げ、ふわりと柔らかいものが唇をかすめた。
「……っ!」
「おやすみ」
不意打ちのキスだということに気付いた時には彼はもう元の体制に戻っていて、
「…………もう」
怒るタイミングを失った私は、諦めたように彼の頭を撫でた。
気持ちよさそうに目を閉じた彼の姿に、結局いつも通りの幸せを感じた。
» end
主人公喋らすと違和感!!