「参号殿」
「なんですか?」
ライコウさんの問いかけに顔をあげれば、驚くぐらい真剣な顔がそこにはあった。
Θ
伝わる熱 Θ
「以前、拙者の様な兄が欲しいと言ってくれたことがあったのを覚えているだろうか?」
「はい。忘れるわけがありません。だってライコウさん、すごく頼子ちゃんを大切にされてて、うらやましいって思ったんです」
そう言って、「実はこっそり兄のように慕ってたりするんです」と秘密を打ち明けるように告げれば、
ライコウさんがほんの少し、困ったように眉を寄せた。
「そう…か。そのことなんだが、……拙者を兄と思うのを、やめて頂きたい」
「え?」
突然の言葉に、我が耳を疑った。
だってライコウさんはいつだって優しくて、
本当に嫌だとしてもわたしが傷つかないようにもう少しやんわりと告げると思っていたからだ。
「急なことで申し訳ないのだが拙者……」
それ以上ライコウさんの口から拒絶されるのが怖くて、
「あ……、です、よね。式神のわたしに慕われても嬉しくないですもんね」
わたしは笑顔を浮かべて口を開いた。
「参号…ど、の?」
「立場をわきまえずにもうしわけありません」
視線を合わせないまま、ペコリと頭を下げると、
「参号殿!」
ライコウさんの強い声が降ってきた。
「……っ!」
「す、すまない。急に怒鳴ったりして」
驚いたわたしに、少しだけ声音が優しくなる。
「いえ……」
「しかし、拙者の気持ちが伝わっていないようなので訂正したくてだな」
そう言ってライコウさんはわたしの頬に手を添え、
視線を逸らしたままのわたしの顔を持ち上げた。
そこには予想外にも真っ赤な顔をしたライコウさんがいて、
「つ、まり……その。兄としてではなく、男として見てもらいたいと言うか……」
歯切れ悪く伝えられた言葉に、わたしはだらしなく笑みを浮かべてしまった。
だって、真っ赤なライコウさんが更に顔を赤らめていうものだから、その熱が真実だと物語っている。
「わたし、も……」
頬に添えられたままのライコウさんの手に自分の手を重ね、
「ライコウさんに妹のようじゃなくて、女の子として扱われたいです」
彼がポツポツと告げた言葉を面と向かって口にすると、
「参号殿は拙者よりも男前だな」
と苦笑するライコウさんに強い力で抱きしめられるのだった。
» end
ライコウさんが好きだー!