市場で人だかり見つけ、もしやと近づくと予想通りその中心にライコウさんの姿があった。 以前と同じく真剣に簪を見つめるライコウさんの姿に、自然と笑みがこぼれる。





Θ 市場の真ん中で愛に出会う Θ





「また頼子ちゃんへの贈り物ですか?」

そう声をかけると、気配を感じないほど集中していたのかライコウさんの顔が真っ赤に染まった。

「あ……い、いや……。その」

慌てふためくライコウさんの言葉を待っていると、

「頼子以外の女子に……、贈り物を選んでいたのだ」

と彼は告げた。その言葉にチクリと胸の痛みを感じながら、

「そう……ですか。あ、またお手伝いしますか?」

と告げれば、

「そりはありがたい……が、今回は遠慮しよう」

ライコウさんは告げた。

「拙者が選ばないと意味をなさないのでな」

そう照れくさそうに笑う姿に、胸がぎゅっと締め付けられそうだった。

「そうですか、ではわたしは失礼しますね」

これ以上この場にいるのはなんだかすごく惨めで、 そんなわたしを見られたくなくて告げたのに、

「待ってくれ」

ライコウさんの言葉がわたしをその場に縛り付ける。

「選び終わるまで、隣にいて欲しい」
「それは……構いませんけど……」

わたしがいても、何の役にも立たないのに、 ライコウさんが誰かに送る簪を選ぶ姿を見ているのは辛いのに、

「よし、これにしよう」

一本の簪をわたしに差し出した。

「あ、の?」

どうすればいいのか分からず簪とライコウさんの顔を交互に見つめると、

「その、参号殿に差し上げようと……」

その言葉だけでわたしの気持ちは180度変化して、一気に幸せになるのだった。




» end

こういうの考えてたのにEDで簪渡してた(笑)