「鷹斗ってどんな子が好みなの?」

中学でも愛相変わらず鷹斗は女子に人気だった。 それでも特定の彼女を作らないから、すごく不思議だった。

「え? どうしたの、突然」
「んー、何となく」

日誌を書きながらそう答えると、なぜか鷹斗は苦笑した。



Θ 黄昏時にキミとふたり Θ




いまいち恋愛というものは分からないけれど、 クラスの女子の恋話に混ざることもあった。
そんな時、決まって「海棠くんはどんな子が好きなのかな?」という話題になるのだ。

「九楼さん、知ってる?」

と問いかけられたことも一度や二度ではなかった。 そのたびに、

「ごめん、知らない」

と答えていたのだけれど、 好奇心として、鷹斗の好きになる子に興味があった。



「…………だよ」

日誌を書きながらそんなことを思い出していると、 ポツリと鷹斗が口を開いた。

「え? ごめん、聞こえなかった」
「だから、俺の好きな子は今、目の前にいる」

そう言って鷹斗が真っ直ぐに私を見て言うものだから、 手からシャーペンが落ちた。

「じょ、冗談よね」
「ううん。俺が好きなのは撫子、君だよ」

射抜くようなその視線に、目がそらせなくなってしまった。 どくんどくんとうるさいぐらいに自分の心臓が騒ぎ立て、 顔が熱を帯びたように熱くなって、風邪に似た症状はもはや手遅れのように感じた。

「困らせたいわけじゃないから、返事はいらないけど」

そう前置きして、

「でも、そんなに赤い顔をしてもらえると都合のいい方に解釈しちゃうかな」

なんて鷹斗が笑うから、

「ゆ、夕日よ。夕日のせいで顔が赤いの」

と、つい可愛げのない言葉が口から洩れるのだった。





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鷹斗はずっと撫子一筋ですから。upしたつもりでずっと忘れてました