Θ
接吻 Θ
トラの左右で違う目の色が好きだ。
だから私は、ついトラの目をじっと見つめてしまう。
「あんだよ、撫子」
「別に……」
私の視線に感じて苦笑するトラに、ついそんな可愛くないことを言ってしまう。
それでもトラは作業していた手を止めて、私に向き直る。
「別にって顔じゃねぇと思うけど?」
そう言ってクッと笑うと、そっと私の頬に手を伸ばす。
( あ、キスする…… )
って思ってそっと目を閉じたら、
「!?」
ぎゅっと頬をつねられた。
「らりするろろ(なにするのよ)」
突然の行動に睨みつけると、
「いいね。オレやっぱ、撫子の怒った顔も好きだわ」
なんて言葉が降ってきた。
「馬鹿じゃないの?!」
と、私も小学生の頃にしたように、トラの頬をつねろうと手を伸ばす。
けれどその手はトラの指に絡め取られてしまった。
「ちょっと、黙って抓られなさいよ!」
「何言ってんだ。お前の手はここだろ」
文句を告げるとそのまま私の手はトラの肩を回って背中へと誘導される。
「意味わかんな…………っ!!」
抗議の声を上げようとしたら噛みつくようにトラにキスされていた。
何度も、何度も、角度を変えてキスをされて、
このまま食べられてしまうんじゃないかと本気で思ってしまった。
「……あのなぁ、目ぐらい閉じろよ。ムードねぇなぁ」
口付けのあとに熱っぽい息を吐き出しながらトラは苦笑した。
「閉じる暇も与えてくれなかったのは誰よ」
そう答え、
「ついでにムードが無いのは私のせいじゃなくてトラのせいでしょ。いきなり人の頬抓って……」
とお説教モードで口を開けば、
「へいへい。んじゃ、やり直すから目ぇ閉じろよ」
なんて言葉がサラッと返ってきた。
「…………は?」
「いや、口開けんじゃなくて目を閉じろっての」
そう言って、トラは最初と同じようにそっと私の頬に手を伸ばす。
私の好きなトラの両目は、真っ直ぐに私を見つめていて、ドクンと心臓が跳ねる。
思わずジッと見つめ返していると、
「ま、開けたままのが興奮するっつーならそのままでもいいけど」
別に興奮するから目を開いていたわけではない。
トラの色違いの両目が、私はすごく気に入っていたのだ。
なんて考えている間にも顔を近づけてくるものだから、私は慌てて目を閉じた。
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恋人同士の話って書き慣れていないせいか恥ずかしいです(*ノノ)