中学になると女の子たちはいっそう恋話に夢中で、
相変わらず私はそういう輪の中に入れずにいた。
それが寂しいとは別に思わなかったのは、
私の隣には同じように恋愛に関心のない理一郎がいたからだ。
それなのに、
「は? ちょっと待って、理一郎」
彼は私を裏切るような言葉を口にした。
Θ
裏切りのセレナーデ Θ
「どういうこと? 好きな人がいるって、初耳なんだけど。てか誰よ」
「どうして何でもかんでもお前に話さないとならなんだ」
はぁ、と面倒くさそうな理一郎のため息が聞こえた。
確かにそんな義理はないけれど、だって、理一郎は私と一緒で、
恋愛に興味がないと思っていたのだ。
「お、幼馴染だから?」
思わずそう口にすると、
「オレは、お前と幼馴染でくくられるのが嫌なんだ」
と理一郎は告げた。
つまりそれは、私と幼馴染だと言われるのが嫌だということなのだろうか。
俯いた私に気付いて、また理一郎がため息をついた。
「別にお前が嫌いだっていう意味じゃない」
「なら、どういう意味よ。それ意外に聞こえないわよ」
自分で思っていたよりショックだったのか、反論する声は少しだけ勢いがない。
「今の関係が嫌なんだ」
「…………え?」
顔を上げると少し顔を赤らめた理一郎がいた。
今の発言のどこに照れる要素があったのだろう。
全然意味が分からない。
「あ。好きな子に誤解されるから?」
クラスの女子と気軽に話さない理一郎が、私とだけは話す。
そんな姿を好きな子に見られたくないのだろうか。
「でも、だったら幼馴染って強調した方が……」
「だから」
私の発言を止めるように、理一郎が強い声で口を開くから、
私は続けようとした言葉を飲み込んだ。
「お前なんだよ」
「……何が?」
「だから、一番最初の答え」
言われて記憶をたどった。
そもそもこんな口論になった原因は、理一郎に好きな人がいるって発覚したからで、
「……………………えぇっ!」
答えの行きついた私に、理一郎のため息が出迎えた。
仮にも好きな相手にその態度は失礼だと思う。……って、自分で言って照れるけど。
「か、考えさせて!」
今の私にはそう返事することしかできなくて、
でも、何故か満足気に笑う理一郎を見てもいつものようにイライラできなかった。
それはきっと不覚にも私が嬉しいと感じてしまったからだろう。
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幼馴染じゃなくて、恋人としてくくられたい