突然会いに来たと思ったら、終夜は私を抱きしめそのまま動きを止めてしまった。
何か不安になることでもあったのかとその背中をさすって「どうしたの?」と尋ねると、
「私は病気なのかもしれぬ」
ポツリと終夜は口にした。
Θ
この病は手遅れです Θ
終夜の身体を引き剥がし、まじまじとその顔を見つめる。顔色は至って良好。
ここ最近は仕事の方もお休みを貰えて、睡眠も十分に取れているはずだ。
「至って健康だと思うけれど」
そう告げると、
「いや、そんなはずはない。胸が痛くて呼吸も苦しいのだ」
大真面目な顔で終夜は口を開いた。
見た目では分からない深刻な病気なのかと一瞬考え込んだ私の耳に、
「そなたのことが頭からはなれず、会えば解消されると思ったのだが余計苦しくなった」
そんな言葉が聞こえ、ぽかんと間の抜けた顔で終夜を見つめてしまう。
つまりそれは、自惚れでなければ終夜が私を意識してくれているということだ。
「えと、……なぞなぞ?」
相手はあの終夜だからもしかしたら全然違う意味で口にしたのかもしれない。
そう思って一応尋ねてみると、
「何を言う。私はこの一大事に、そのようなことなど言わぬぞ」
終夜は更に真面目な顔で口を開いた。
それが可笑しくて思わす笑みをこぼしたら、
「なっ……。私が病に侵されたことがそんなに面白いのか?」
少し怒ったように終夜は告げる。
「そのような薄情ものだったとは……」
終夜は頬を膨らませながらそんなことを口にして、
「だが、最期に見るそなたの顔が、泣き顔でないのなら構わぬ」
と、なんだか物騒なことを告げた。
そのままぽかんとする私に優しく微笑むと、
「余命があとどれほどか分からぬが、私の残りの人生全ては、撫子と共にありたい」
なんて、まるでプロポーズのような言葉を口にした。
「ちょっとまって、終夜。最期とか余命とか話が飛びすぎて全然頭がついていかないんだけど……」
慌てて口を挟むと、
「簡単に言ってしまえば私はそなたが好きだということだな」
と終夜は笑った。
その言葉に私は顔は一気に熱を帯び、
「どうしよう、死ぬほど嬉しいかも……」
終夜が病気かもしれないと大騒ぎした理由が分かった気がした。
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病気じゃないと説明するのに時間がかかりそうです(笑)