Θ キスのゆくえ Θ




間接キスぐらいであいつがガタガタ言うもんだから、

「た、耐性つけりゃいいんだ、耐性をっ!」

ついそんな言葉を口にしてしまった。





「いいかっ! い、今からしてやるから、動くんじゃねえぞ」

俺の言葉に

「は、はいっ!?」

目の前でカチンコチンになりながら頷くものだから、引っ込みがつかなくなってしまった。 両手で肩を掴むと、緊張しているのがストレートに伝わってきた。

( っつーか、んな震えるぐらい緊張すんなら断れっての )

そんな意味合いを込めて顔を見ると、何を勘違いしたのかこいつはぎゅっと目を閉じた。 そんな行動に何故か苛立ちを感じた。

( 恋愛指導だからって諦めてんのか? )

つまりそれは、相手が俺じゃなくても他の番長に同じことを言われたら受け入れるということなのだろうか。 指導だからと簡単にキスされてしまうのだろうか。

「…………、ハァ」

そう思ったらキスするなんて簡単にできなくて、

「っ、たっ!?」
「…………」

こいつの無防備な額にでこぴんをしてやった。 目を開けてきょとんとした顔を向けるものだから、

「……フン」

俺はパッと顔を逸らしてこいつから離れた。

「行くぞ」
「え? あ、ちょっと……」

背中で何か文句を言っているようだったけれど、俺は無視して歩いた。



胸のムカつきは、まだおさまらない。寧ろあいつの無防備な顔を見てから、いっそう強くなったような気がする。 意外と睫毛長ぇよなとか、黙ってれば女らしのにとか、いつかこんな顔を見せる相手ができるんだろうかとか、 そんなことを考えてしまってキスの一つできなかった自分に腹が立った。

「……クソッ!」

あいつはただの恋愛指導の相手だというのに、だってそれじゃ、俺があいつのことマジで…………。

「ありえねぇ!」

苛立ちの原因を認めないとでもいうように、俺は大声で口にして屋上を後にした。



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あのキスシーンでこんな心境だったら萌える!!