「こら、頭に乗るな! 顔にこすり付けるな!」

今日もまた、弥太郎さんは猫にモテモテだ。

「いいなー……」

ぽつりと呟いて私はちょこんと弥太郎さんの隣に腰を下ろした。 そのままじっと猫を見つめていると、弥太郎さんは口を開く。

「真奈も手を伸ばせばすり寄ってくるぞ」

言われてそっと手を伸ばすと、すぐに猫が私の指に鼻をこすりつけてきた。

「可愛いー」

思わず漏れた私の言葉に、

「だろー」

と弥太郎さんは笑う。
そんな顔を見たら思わず笑みを返してしまいそうになり、 緩めかかった顔を引き締め私は口を尖らせた。




Θ あなたと私と猫 Θ




確かに猫は可愛い。でも、今の私には自由気ままな彼らが憎い。 一緒に生活をしているのに、弥太郎さんは私といるより猫と触れ合っている時間の方が長い気がするからだ。 それが私は面白くない。

「ん? どうした?」

弥太郎さんはすぐに私の変化に気づき、視線の先を辿って口の端を持ち上げた。それから

「なるほどなぁ」

と頷いて立ち上がると、ぶら下がる猫たちをそっと床に置いた。

「?」

猫と一緒になって行動を見上げると、彼はニヤリと笑って見せるとどかっと私の背後に座り込んだ。 そしてそのまま背後から抱きしめるように私の体を包み込むと、

「さっきのいいなぁは俺に言ったんじゃなくて、猫に言ってたのか」

と笑った。指摘された私は真っ赤になってすぐに俯いたのだけれど、 正解と告げているような態度に弥太郎さんはますます楽しそうに笑った。

「心配しなくても俺の一番は真奈だって」

そう言われ、

「わ、私の一番も弥太郎さんです」

と返せば「知ってる」なんて言われ、私はこの人には20年経っても勝てない気がした。




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懐かれ方が尋常じゃない…!