「また弥太郎さんが猫をつれてきたんですね」
居間で固まるあの人の後ろ姿に、私は笑みをこぼしながら近づいた。
背筋をピンと伸ばして、膝に猫を乗せ、兼久さんは硬直していた。
Θ
小さな幸せ Θ
「まぁ、可愛い。すっかりあなたに懐いて」
「う、うむ……」
私が近づくと猫はむくりと上体を持ち上げた。
途端に兼久さんは「う……っ」と肩に力を入れる。
「ふふ、相変わらず小さくてかわいいものは、苦手なんですね」
隣に腰を下ろしてそう告げると、
「いや、これでも昔よりは……かなり……」
と兼久さんは口を開いた。
シロに散々からかわれていた姿を思い出して、私は笑った。
軒猿の先代でとても強い人なのに、小さなシロを相手に顔を真っ青にしていたからだ。
「ふふふ……」
思わず笑った私に
「……やれやれ」
と兼久さんは苦笑しながら手を伸ばす。
「あっ」と思ったときにはぐいと肩を抱き寄せられていて、
兼久さんに寄り添うように体を預けていた。
「これでも昔よりは慣れたと申したはずです」
「そう、ですね」
兼久さんは任務でたくさんの人を殺めてきた。
だから同じその手で私に触れることをひどく怖がっていた。
動物も嫌いだからではない。
殺してしまうかもと言う苦手意識から、気づけば体が拒絶反応を示すようになってしまったのだ。
「お主のことも、儂は愛おしく思う」
肩に回した腕に力を込めて、彼は膝で丸まる猫の頭をそっとなでた。
「こやつと同じく、小さくて愛らしい……」
その言葉に先ほど自分で言った「小さくてかわいいもの」に
自分が含まれていることに気づいて顔が熱くなるのを感じて顔を上げれば、
すごく優しい目をして私を見つめる兼久さんに気付いて私の頬はますます赤に染まるのだった。
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EDはきっとこんなストーリー