Θ 繰り返す幸せ Θ




前回のデートでは服まで手が回らなかったので、 何度も立ち読みして覚えた可愛い洋服を自分の持ち服と照らし合わせてなんとかオシャレしてみた。 もちろん、唇にリップも塗ったし、透明マスカラだって使っている。 毎回篠原くんは「似合っている」と言ってくるれけれど、今日はどうだろうかと考えながら待ち合わせ場所へと急いだ。




「……うぅ、緊張してきた」

待ち合わせの場所にはすでに篠原くんがいて、 私は少し離れた場所で鏡を開いて自分の姿を確認した。

「変なとこ、ないよね」

そう言って顔の前に持ってきていた鏡を下ろすと、目の前に篠原くんがいた。

「わぁ!」
「人を見て驚かないで下さい」

篠原くんはそう言ったけれど、心の準備ができていなかった私の心臓はバクバクだ。

「……ひ、人を驚かせるのは、よくないよ」

以前と同じセリフを口にすると、

「それは僕に原因があるのではなく、先輩がぼんやりしてるのがいけないのでは?」

と、彼も同じセリフを口にした。 それが何だかループに気付いていない人々の会話のようで、 どちらからともなく笑いあった。



「今日の先輩は……雰囲気が違いますね」

私の姿を見ながら、篠原くんは漏らした。

「あ、うん。ワンピースだからかな。夏休み前に買ったんだけど、着る機会がなくて。 ……ほ、ほら、今はループの最中じゃない?  だから似合わなくても他の人の記憶には残らないからいかなーとかそのなんていうか……」

変に言い訳なくてしなくてもいいのに、私の口はベラベラと言葉を紡いだ。 その間も篠原くんは真っ直ぐに私を見つめるものだから、

「だから……その……えと……、調子に乗りました。ごめんなさい」

視線に耐えかねて私は謝ってしまった。

「なんで先輩が謝るんですか? 良く似合っているのに」

そう言って篠原くんは改めて私を上から下まで見つめる。

「そういう格好も、素敵です」

サラリと言われて一気に首から上が熱を帯びてしまった。

「あ、あの、その……」

こんな時、どう切り返したらいいのか分からない私は、 寝る直前まで読んでた『土岐島高校科学部によるデート必勝法』の中身を思い出すのだけれど もちろんそんな気のきいた返しは載っていない。

「……ずるいよ」

何とかその一言だけ返すと、

「何がですか?」

と篠原くんは尋ねる。

「だって。全力で篠原くんに思い出を作る覚悟だったのに、私ばっかり嬉しくさせられてるんだもん」

少し拗ねたように告げた私の言葉に

「僕だって充分嬉しいですよ」

篠原くんは笑って答えた。

「だって、そんな先輩とデートできるんですから」

そう言って差し出された手を握りながら、

「やっぱり私の方が嬉しくさせられっぱなしだよ」

と告げずにはいられなかった。




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デートの会話が可愛く好きです(´▽`)