ハッと目を開けると、そこは自分の部屋だった。
そこでようやく今までの出来事が夢だと理解したのだけれど、心臓はまだバクバクと音を立てていた。
どんな夢を見たのかもうあまり覚えていないけれど、螢がいなくなってしまう、そんな夢だった。
Θ
眠れない夜に君の隣で Θ
「なんだ? 怖い夢でも見たのか?」
外の空気を吸おうと襖を開けると、お風呂から上がった螢が廊下を歩いているところだった。
「どうして?」
暗い廊下で表情までは見えないはずなのに、螢の言葉にドキリとした。
「オマエがこんな時間に起きてんの珍しいだろ?」
今まで店の手伝いをしていたから、早寝早起きは徹底していた。
「そう、だね。ちょっと怖い夢……みた」
「ふーん。どんな?」
螢は何気なく訊ねたのだろう。
悪夢は人に話すと起こらないというし、話してしまった方がすっきりするかもしれない。
そう思って覚えている限りの夢の内容を伝えたのだけれど、
「ったく、そんぐらいで泣きそうな顔すんなよ」
螢はそんなことを告げた。
「そのぐらいって……、私にとっては一大事なのよ」
「……仕方ねーな。枕持ってこい」
盛大なため息をついて、螢はそんなことを口にした。
「なんで?」
今のやり取りでどうしてそんな流れになるのだろう。
思わずそう答えると、
「なんでって。オ、オレが一緒に寝てやるって言ってんだ」
「えっ、で、でも……」
すんなりと頷けるはずもなく、断わりの言葉を探していると、
「いいからほら、こっちこいよ」
あっさりと腕を掴まれ螢の部屋に連行されてしまった。
螢の部屋に着くなり、彼は私ごと布団に横になった。
ガッシリと抱きしめられていて、逃げることはかなわなかった。
「どうせあのままじゃ寝れねーんだろ?」
「こ、この状態だとますます寝れないような気が……」
ドキドキしながらそう答えると、
「大丈夫だ。オレも全然寝れねーから」
螢はそんなことを答えた。
「そ、それって大丈夫って言わないんじゃ……」
「でも、オレがずっと傍にいるって実感できるだろ? あんなのは夢だ。今この瞬間を信じろ」
どうやら悪夢を見た私にあんなことなど絶対に起こらないと伝えているようだ。
少しわかりづらい螢の優しさが嬉しくて、
「うん」
安心したら急に睡魔がやってきた。
寝てしまうのがなんだか惜しい気がしたけれど、今なら幸せな夢が見れそうで、
螢の温もりを感じながらゆっくりと瞼を閉じるのだった。
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またまたボイスネタ。螢の優しさにこっちが照れました///