螢のことを何も知らないんだと気付いてから、時間があれば私は螢とお話しするようになった。
といっても螢が町を見回る間、隣を歩くだけなのだけれど。





Θ 好きなものを教えて下さい Θ





「螢の好きなものって何?」
「やっぱり強い奴を見つけると嬉しくなるな」

予想通りの言葉に、思わず笑みがこぼれた。
私の想像している螢と、実際の螢がカチリとはまる瞬間嬉しくなる。

「あとは、高いところも好きだぜ」

続けられた言葉は少し意外だった。
それが顔に出たのだろう。

「おい、オマエ。今失礼なこと考えなかったか?」

ピタリと螢の足が止まり私を見つめる。
失礼なことと言われると、例の言葉が頭をよぎる。

「馬鹿と煙はとか考えただろ」

まさに今考えたことを口に出され、ビクリとした。

「怒ってないから言ってみろ」

そう言いつつ、螢は明らかに機嫌を悪くしている。

「えーと、えーと……」

どう誤魔化そうかと考えて、

「その、私も高いところは好きだよ」

と答えた。

「へっ。オマエも馬鹿と煙はってヤツか?」

意地悪な笑みを浮かべる螢に

「高いところも好きだし、螢も好き」

そう答えると、

「なっ……!」

彼は真っ赤な顔で固まった。
そんな顔も好きだなと思いながら、

「ね、螢の好きなものって何?」

私はもう一度同じ質問をする。

「強い奴と、高いところと……、それから?」

まるで誘導するように訊ねると、

「オ、オマエだ。馬鹿」

私のほしかった言葉と照れ隠しの言葉が振ってきたから、
私は満面の笑みを浮かべて彼の隣を歩くのだった。







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人物紹介のボイスに萌えました(●´v`●)