ルカがこっそりと私だけにドルチェを用意するのはいつものことで、 部屋に戻るとパーチェが「今日は何食べたの?」と尋ねるのはいつものことだ。




Θ ユーフォリア Θ





「どうしてわかるの?」

いつもいつも不思議なのだ。 パーチェには私のような能力はないはずなのに、 こっそりとドルチェを食べた時に限って、部屋に戻るとパーチェがいるのだ。

「そんなの、お嬢を見てたらわかるよ」

と彼は笑う。 試しにリ・アマンティの能力を使って彼の心を覗くと、 『おなかすいた』といつも通りの言葉が浮かんでいる。 私と同じ能力が彼に宿ったわけではないようだ。

「お嬢からとっても甘くていい匂いがするから、すぐわかるよ」

その言葉通り、『お嬢いいにおい』と彼の心の中に言葉が浮かぶから、 なんだか恥ずかしくなってしまった。

「もっと嗅いでいい?」

気づけば私はパーチェの腕の中にすっぽりとおさまっていて、

「お嬢自身がドルチェみたい」

にこにことパーチェは嬉しそうに笑っている。 こんなふうに抱きしめられていてはナイフを投げることもできなくて、 どうすればいいのかと考えていると、

「ね。味見していい?」

なんて言葉が聞こえた。 心の中では『お嬢なら甘いよね』とか『食べちゃいたい』なんて言葉が浮かんでいるものだから、 私は更に真っ赤になってしまう。

「大丈夫……。噛んだりしないから……」

そう言って近づいてくるパーチェの顔に、思わずギュッと目を閉じると、

「な、ななな。何をしているんですか!!」

ルカの声と同時に、「ぎゃん!!」というパーチェの悲鳴が聞こえた。 恐る恐る目を開けると、真っ青な顔をしたルカと後頭部を抱えて蹲るパーチェの姿があった。

「大丈夫ですか? お嬢様」

何が起きたのかとパチパチと瞬きを繰り返すと、

「ルカちゃんが、このバカの頭をしこたま殴ったんだぜー」

誰もいなかったはずの私の部屋のベッドで、デビトがクククッと笑っていた。

「デビト! あなたも見ていたのなら止めて下さい」
「はぁー? なんでオレがこんな面白いもん止めなきゃなんねーんだよ」

デビトはニタニタと笑っている。

「お、おおお、お嬢様が傷物になったらどうしてくれるんですか!!」

そう言ってデビトに詰め寄るルカをそのままに、私は蹲ったままのパーチェに近づく。

「大丈夫?」

そう言って彼の頭をさすろうと手を伸ばすと、逆にその手を捕まえられて引き寄せられた。 予想外の行動に、私の身体はそのままパーチェの方へと倒れ、

「ん。やっぱり甘い」

悪戯っ子のように微笑む彼と目があった。

「おいおい。ほんとにやりやがったぞ」
「パーチェ! そこに正座なさい!!」

ニヤニヤと笑うテビトと、悲鳴に近いルカの声に、

「やばい、お嬢、逃げるよ」

気づけば私はパーチェにお姫様抱っこされていた。





必死に逃げる彼の心をそっと覗くと、 『お嬢を舐めちゃった!!』『やっぱり甘い!!』『癖になるかも!!』『お嬢だいすき』と馬鹿正直にすべて表示されていて、 私は彼の顔がまともに見れなくなるのだった。




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幼馴染可愛くてハァハァ…! 去年書いたものを今頃up^^ (Euforia:幸福感)