Happy Lunch



「ヨシュアさーん。いますか?」
「なんなんだ、人の部屋の前で……」
「あ、いますか? ちょっと開けて下さいよ」
「だから何なんだ、まったく」

ブツブツと文句を言いながらヨシュアがドアを開けると、 藍澄はその隙間に身体を滑り込ませた。

「んなっ! 貴様、用件を言え!」

ヨシュアが声を荒げるのはいつものことで、

「あれ? 言いませんでしたか? 楽しい食事を持ってきたんですよ」

気にした様子もなく藍澄は持ってきたお弁当を広げた。 以前食堂でヨシュアが野菜を食べずアニタを困らせていることや、 更にはサプリで栄養を補っていることを知り、 「食事は楽しくとることも大切だ」と告げたのだ。 そんな藍澄に、ヨシュアは、 「それなら楽しい食事とやらをやってみろ」と言ったのだ。

「はい、ヨシュアさん、あーん」
「はっ!?」
「だから、あーん、ですよ」
「何がだからだ。誰がするか、そんなこと!」
「えぇ? アルヴァさんに相談したら楽しい食事はこうだって聞いたんですけど……」
「お、ま、え! 騙されてるだろ、完璧に」

残念そうに呟く藍澄に、ヨシュアはゼェハァは肩で呼吸をしながら口を開いた。

「これのどこが楽しいんだ」
「え? 楽しくないですか?」
「た、楽しいわけがないだろ!」
「そうですかー。作戦失敗かぁ」

再び俯いた藍澄は、「はぁ」とため息をつくと広げたお弁当を片づけ始めた。

「じゃ、お弁当持って帰りますね。勿体ないし、ルシオくんにでもあげようかな」

ポツリと呟いた声に反応したヨシュアは、ガシッと藍澄の手を掴んだ。

「待て、ルシオにやるだと?」
「はい。ダメ…ですか?」
「駄目に決まっているだろう」
「??」
「と、とにかく。これはオレに作ってきたものなんだろ?」
「はい」
「ならオレが食うのは当然だ」
「じゃぁ……」

パッと笑顔を浮かべた藍澄に、ヨシュアはほんのりと頬を染めて口を開いた。

「食材に罪はないからな」
「はいっ」
「た、ただし。……自分で食うッ!」

ひったくるようにお弁当を奪ったヨシュアに目を丸めながら、藍澄は尋ねる。

「おいしいですか?」
「別に……」
「そう…ですか」
「ふん。悔しかったらまた作ってみろ」
「え?」

聞き間違いかと顔を上げれば、「なんだ」とヨシュアは平然と藍澄に視線を返す。 けれど自分の発言に気付いたのか、すぐに顔を赤らめるものだから、

「はいっ」

と藍澄は嬉しそうに返事するのだった。




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(「食事は楽しく〜」で思いついたネタだったけれどEDとかぶったのでちょっと変更)