「すみません、ヴィオレさん。まさかこんなに買うものがあるなんて思ってなくて……」

補給のために立ち寄ったコロニー。 だけれど藍澄には特にすることがなく、アニタに代わってお使いに出かけることにした。 ちょうど出かけようとしていたヴィオレがそれに気づいて同行を申し出たのだけれど、 食料の方も意外と危機的状況だったようで、 必要なものを注文するだけでかなりの時間がかかってしまったのだ。

「いいってことよ。どーせ荷物もほとんど運んでもらえるみたいだしな」
「でも……。ヴィオレさんも出かけるところだったんじゃ……?」

コロニーに立ち寄るたびにナンパをする彼のことだ。 今回だってナンパ目的で出かけようとしていたのではないかと藍澄は申し訳なさそうに口を開いた。

「まぁ、別に構わねーよ。なんてったって藍澄ちゃんとデートしてるんだから」
「で、デート?! な、何に言ってるんですか!?」

素っ頓狂な声を上げる藍澄を、ヴィオレは楽しそうに見つめる。

「顔真っ赤にしちゃって。手つなごうか?」
「つなぎませんよっ!」
「じゃあ、腕組むか?」
「組みません!!」

普段から20歳未満の女性は範疇外だと豪語している彼のことだから、 からかわれているんだとすぐにわかった藍澄は、怒ったようにスタスタと一人で歩きだした。

「あ、おい。そんなプンプン怒って歩くと……」
「なんです……うわぁ!」
「こけるぞって言うつもりだったんだけど……あーぁ、遅かったな」
「遅いですよ、もう」

ヴィオレに怒るのは筋違いだと知りながらも、藍澄はそう答えていた。 自分がどうしてここまで怒っているのかわからず、それでもヴィオレに八つ当たりしてしまった。

「はいはい。拗ねてないで、ほら」
「え?」
「お手をどうぞ、お姫様」
「〜〜〜ッ」

またからかわれたんだと思い伸ばされた手を叩き返そうと腕を振り上げると、 その手はいとも簡単にヴィオレに掴まれていた。

「艦まで手を繋ぐぐらい……いいだろ?」

そう言って返事も待たずにヴィオレは歩きだした。 けれどその歩みはさきほどよりゆっくりで、藍澄もすぐに気づいたけれど何も言えなかった。 それに握られた手がそれを拒むように、ぎゅっと力強く握られていたから。



I'll be delighted




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(藍澄→ヴィオレな感じ。興味ないと言いつつ、ヴィオレも気にしてるといい)