Strawberry Choco Dipped
「フェンネルさん、どっち食べますか?」
買ってきたばかりのソフトクリームを差し出すと、芝生に寝ころんでいたフェンネルは身を起こした。
「冷たきゃどっちでもいい」
そう言って手を伸ばすと、藍澄の手からアイスをひったくるように奪う。
そんな彼に苦笑しながら、藍澄はフェンネルの隣に腰掛けた。
「それにしてもこんな風にのんびり過ごせる日がくるなんて」
しみじみと口にながら辺りを見渡すと、たくさんの笑顔であふれていた。
それは親子だったり、恋人だったり。その笑顔を守ることができたんだと思うと、少し藍澄は誇らしくなる。
「今度はこの平和を守らないとだめですね」
同意を得るようにフェンネルを振り返ると、彼は何食わぬ顔で藍澄のアイスにかじり付いているところだった。
「……何してるんですか?」
「見てわかんねーのか?」
挑戦的に笑うと、もう一口かじる。
「アイスを食べてることぐらいわかります。そうじゃなくて、なんで私のアイスをフェンネルさんが食べてるのかって聞いているんです」
真っ赤な顔で一気にそう告げた藍澄を、フェンネルはニヤニヤと笑う。
「こっちのがうまそうだ」
そう言って口を開けて近づくフェンネルの額を、ぺちんと藍澄はたたく。
「痛ぇ…」
「痛くありません。もう、だからフェンネルさんに最初にアイス選ばせたんじゃないですか」
藍澄がそうため息混じりに告げると、
「食ったらこっちも食いたくなった」
当然のようにフェンネルは答える。
「フェンネルさんって我が儘ですよね。雪乃さんと大違い」
「兄貴と比べんな」
「比べられたくなかったら我慢して下さい」
ぴしゃりと言い放つと、フェンネルは口の端をクッと持ち上げる。
「オレはこれでも我慢強いぜ?」
「どこがです……か?!」
怒った藍澄が顔を上げると目と鼻の先にはフェンネルの顔。
「一番食いたいもんは我慢してんだぜ、これでも」
と言って唇を舐められた。
「なっ…、なっ…」
真っ赤な顔で口をパクパクさせる藍澄を見ながら、
「デートのたびにこれも悪くねーけど、そろそろオレはお前が食いたいんだけど?」
なんてフェンネルが言うものだから、藍澄は更に顔を赤らめるのだった。
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(フェンネルさん予告なく藍澄ちゃんをたべればいい )