Sleeping Beauty



「おぃ、藍澄」
「てめぇ…、人を呼び出しておいてまた寝てんのかよ」
「…ったく。珍しく人が朝から起きたっつってんのによ」
「っつーか、なんつー顔してやがんだ」

諦めたように溜息を吐くと、フェンネルは藍澄の隣りに腰を下ろした。

「いくら平和になったからって、そこらへんで寝るなって何度言やわかるんだ」

まだ戦争が行われていたころ、 会って間もない藍澄のことがフェンネルはずっと気にかかっていた。 だからいつだって彼女のためを思って忠告をしていたというのに、 ポヤッとした彼女は、「悪い人なんていませんよ」と笑って流すのだ。

「こうなったら身を持って体験してもらわねーとだよなぁ」

クッと口の端を持ち上げて、フェンネルは藍澄へと顔を近づける。

「三秒以内に起きねーと、襲うぞ、コラ」

そんな早くに彼女が起きるなんて全く思っていない。 だからこそ、フェンネルは口にした。 後で真っ赤な顔をして彼女に怒られても「忠告した」と言い返すためだ。 けれど、

「それは大変です」
「はぁ?!」

パチリと目を覚ました藍澄に、フェンネルは声を上げる。

「てめー、寝たふりしてやがったのか? 上等だ!」
「上等なのはどっちですか、もう。寝込みを襲うなんて最低です」
「…んだと?!」
「それに」

今にも噛み付きそうなフェンネルに向けて「ふぅ」とため息をつくと、 藍澄はそっと目を閉じ口を開く。

「恋人同士なんですから、正々堂々と襲って下さい」
「……いい度胸してやがる」
「だって、フェンネルさんの彼女ですから」
「確かに」

ガッと力任せに顎を掴むと、フェンネルは藍澄を自分のもとへと引き寄せる。 乱暴な態度とは裏腹に触れた唇はふわりと優しく、甘かった。





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(付き合いが長くなるにつれ、フェンネルの扱いはうまくなるといい。)