Is this Love ?
アルヴァと出かける約束をしていた藍澄が準備を終えて彼を迎えに行くと、
部屋の中から話し声が聞こえた。
声の主がソフィアだとすぐに気づいて中に入ろうとした瞬間、
「俺と藍澄が付き合ってるだって? 冗談!」
というアルヴァの声が聞こえた。
その言葉は最近仲良くなれたと思っていた藍澄にとっては十分すぎるほどショックだった。
約束の時間になって、藍澄は憂鬱な気持ちのままアルヴァの部屋に向かった。
そこにはちょうど部屋から出てくるアルヴァの姿があった。
「お、ちょうどいいタイミングだったな」
「…………」
「藍澄?」
「…………何ですか」
いつもなら赤くなるなり何か反応を示す彼女が無表情で自分を見つめるものだから、
アルヴァは苦笑して口を開いた。
「俺のお姫様は一体何にご機嫌斜めになっているんだ?」
「そんな思ってもいないこと、口にしないで下さい」
「藍澄?」
癇癪を起こすわけでもなく、ただ静かに怒っている藍澄にアルヴァは優しく声をかける。
「思ってもないことなんて口にするはずがないだろう?」
「だって…………」
「ん?」
「だってアルヴァさんは私のこと……な、なんとも思ってないんですよね」
予想外の言葉に思わずアルヴァは目を丸めた。
それから藍澄の怒っている原因に思い当たりニヤニヤと笑う。
「ははーん。さては藍澄、さっきのソフィアとの会話を聞いてたんだな?」
「そ、そうですよ。聞いちゃいましたよ。悪いですか?」
盗み聞きしたことを認めた上に開き直った藍澄が可笑しくて、アルヴァはますます笑ってしまう。
そんな態度が藍澄を怒らせると知りつつ、止める事はできない。
「なっ、何笑ってるんですか」
「だってな。それで怒ってるってことは、藍澄は俺を意識してるってことだろ? 嬉しくて笑うだろ、そりゃ」
「そ、そうですよ。私はアルヴァさんが好きですよ! 悪いですか?」
「いや?」
真っ赤な顔で更に開き直る藍澄に
「俺の片想いだと思ってたから、ソフィアに聞かれたときは否定したけど……」
と告げると、藍澄はポカンとした顔を見せる。
「やっぱり全部は聞いてなかったんだな。ま、結果よければすべて良しってやつだな」
「わ、私は全然納得がいってないんですけど」
「つまり……」
声を潜めたアルヴァの言葉を聞こうと顔を上げた瞬間、チュッと唇が触れ合った。
「こういうことさ」
「ア、アルヴァさん〜〜〜ッ!」
「あはは。さてと、機嫌も直ったところでデートと行きますか」
ニカッと笑って手を差し出すアルヴァに苦笑しながらも、
藍澄は迷うことなくその手を取るのだった。
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好きな子も自分を好きと分かってはしゃぐオッサンが書きたかったんです。
ソフィアに「冗談! 藍澄の初恋がこんなオッサンじゃ可哀想だろ。俺の片想いだよ」
とか告げてたんだけど、藍澄は最後まで聞かずに逃げたので、こうなったという話。